小林 倫 機械学習による斜面崩壊危険度評価モデルの他地域への適用 大塚 悟 日本では2001年に土砂災害防止法が制定されたことに伴い,斜面災害のソフト対策が推進され,近年ではAIを用いた斜面崩壊に関する研究が行われてきている.本研究では斜面崩壊危険度評価モデルの他地域への適用を目的とし,6つのエリアを対象に条件を適宜変更し検証を行った.Step1では機械学習を用いたメッシュ単位での危険度評価を実施した.分類手法にはバギングが適しており,全てのエリアで複数のスケールの地形情報を使用し,開度・尾根谷度を追加したモデルが最も高性能となった.また,各地形量の分布はエリアによって異なるものの,モデルの重要度を算出したところ,上位下位5項目は全てのエリアで共通しているものが多いことが明らかとなった.Step2では,Step1の解析結果である危険度評価値を画像化し,pix2pixを行うことで崩壊ブロックを抽出した.モデルの損失等の比較では,各エリアであまり差はみられなかったが,テストデータを用いた検証では,エリアによって結果に差が生じた.その要因として,エリアによって崩壊の規模や数,形状が異なること,学習していない規模の崩壊がテストデータに含まれていたことが考えられる.また,学習には大規模な崩壊が適していること,画像サイズを小さくすることで良質な学習データを確保できることを立証した.さらに,危険度評価値の加工による性能向上の可能性を示した.他地域への適用としてStep1,Step2で作成したモデルを他地域で検証した.Step1においては,学習エリアと検証エリアで標高の分布が大きく相違している場合,予測が正しく実行できない.標高を除外した結果,真陽性率が大きく向上し,その有効性を示した.また,複数スケールの地形情報を考慮し,開度・尾根谷度を追加したモデルは他地域においても優位であることを確認した.他地域での検証では全体的に性能が低下するが,地形量が類似しているエリアの結果は比較的良好であった.したがって,他地域への適用においては地形量が類似していることが重要と考えられる.Step2においては,他地域で作成した画像生成モデルは,精度の高い危険度評価値を使用した場合のみ適用可能であることが示された.他地域における高精度な崩壊予測を実現するためには,今後も引き続き検討が必要である.