山本茉那 情報収集方法を考慮した長岡花火大会帰宅時の経路選択モデルの構築 佐野可寸志,加藤哲平 新潟県長岡市では,毎年8月2日,3日に長岡まつり大花火大会が開催され,コロナ禍以前は来場者数が2日間で100万人を超える賑わいを見せていた.来場者の集中に伴い,花火大会終了時刻の21時から深夜まで毎年深刻な交通渋滞が発生している.特に花火大会会場最寄りのインターチェンジ(以下,IC)である関越自動車道の長岡ICに向かう国道8号は交通渋滞が激しい路線であり,長岡造形大学から長岡IC間の4.4kmを通過するのに最大で2時間以上かかったという記録が残っている.国道8号への需要の集中を抑え渋滞を緩和するためには,迂回経路への分散を誘導する必要がある.対策として,事前の情報提供といったソフト対策が講じられており,情報提供手段を評価する必要があると考えられる.そこで本研究では,花火大会当日に行ったアンケート結果から長岡まつり大花火大会来場者の属性を分析し,また経路選択モデルを構築することで,情報発信の効果と影響を明らかにすることを目的とする. アンケート集計結果より,初参加者と5回目以上のリピーターの来場者に有意な差がみられた.本花火大会は昨年度から会場チケットの事前購入が必要になったため,チケットの購入時期などを把握しているリピーターの割合が増加したと考えられる.また参加回数ごとの利用ICを集計すると,参加回数が増加するほど長岡ICの利用割合が減少することが分かった.このことから一度迂回経路へ誘導することができれば,継続的な迂回経路の使用が期待されると考える.また,アンケートの回答を用いて非集計ロジットモデルを用いた経路選択行動モデルのパラメータ推定を行った.既往研究では経路長,所要時間,誘導看板が設置されているか否かなど,経路情報に関する係数を用いていたが,本研究では事前の情報収集の有無や,渋滞に対する寛容さなど,個人の特性に関する係数を組み込むことを目標にパラメータの推定を行った.今回用いたデータでは尤度比を向上させることができなかったが,個人特性を用いていないモデルと比較し,t値,的中率の増加が見られ精度向上が確認できた.これにより迂回経路選択確率を上げるために効果的な施策介入の種類や工夫が,個人特性により異なる可能性を表すことができた.