針原拳太 状態空間モデルを用いた冬季高速道路におけるスタック発生リスクの予測 佐野可寸志 本研究では,近年の極端な豪雪を起因とした交通障害の頻発を背景に,スタックの発生リスクの高まりを逐次的に把握することが可能なリスク指標を提案した. リスク指標の構築にあたり,スタックの発生が走行速度の低下に起因していることから,区間平均車速を推定する状態空間モデルを構築した.ここで影響が大きいと考えられる路面状況や視程レベルに考慮した,モデル構造を単純集計的な分析から検討した.それぞれの分類やレベルは気象データや除雪車の通過履歴等から定量的に分類できるモデルを別途構築して,カメラ等によるモニタリングが行われていない区間でもモデルを適用できる手法も併せて提案した.得られた結果を踏まえて,路面状況を主として説明変数に設定した状態空間モデルを定式化し,複数の過去のスタック発生事例に適用した. 適用結果として,いくつかの事例において,スタックの発生直前には同一の路面状況であっても回帰係数が一定にならず,極端に負に発散した値が推定されていることが確認できた.これらの事例に関して,当該区間はモデルの説明変数として考慮できていない何らかの異常事象の発生により走行性能の大幅な低下が引き起こされスタックの発生しやすい状況となっていたと考えられる.したがって発生リスクに関する指標として,各路面状況における回帰係数のばらつきに着目することが有効であると考え,確率密度関数を基に定量的なスタックの発生リスク指標SRIを構築した.構築したSRIに関して,関越自動車道の広域で算出し,スタックが発生していない区間ではどのような値を示しているのか等を確認することで,リスク指標の妥当性を検証した.その結果,実際にスタックが発生していた区間およびその周辺では,スタックが発生する数時間前から継続的に危険な値を示していることが確認できた.またスタックの発生地点から離れた区間においては,SRIは安全側の値が多く算出され,危険な時点の出現も断続的であった. 本研究ではスタックの発生リスクが高まっている区間を特定できる指標SRIを構築した.実際に過去のスタック発生事例において適切に検知できていることが確認できた.一方で,実用的に研究成果を活用していくためには,前述に示した異常事象に関して詳細な知見を得る必要がある.これにより,スタックの発生リスクの高まりの早期検知と併せて,より迅速な対策の体制構築に貢献することができると考える.