春日井裕也 発災初動期における救援物資配送の実態把握と数理最適化モデルによる評価 佐野可寸志 近年,地球温暖化などの気候変動により自然災害が増加,激甚化する傾向にあり,毎年多くの人命や財産が失われている.年々増加する災害によって,多くの人々が被災し,被災地で災害対応として救援物資配送が必要とされる.本研究では,発災直後から救援物資配送が求められる災害を対象に,救援物資配送時の各団体における役割や被災地域における状況を明らかにし,その実態に即した,より迅速に救援物資を被災地域へ配送する意思決定手法を提案する.これによって,各団体の役割を明確にすると同時に,現行の体制での配送における課題を把握し,モデルによる配送経路の最適化結果から,災害時の配送を円滑に進める.本研究では高頻度で発生する中規模災害の一事例として,令和4年8月新潟県北部豪雨を対象に県から被災地域の避難施設までの,救援物資配送の流れや課題を明らかにして,その実態に即した救援物資配送モデルを構築し,その有用性を感度分析にて検証した. まず,救援物資配送実態を調査するために,令和4年8月新潟県北部豪雨時の救援物資配送実態を,支援者側である,新潟県と県の協定締結先企業,配送先である,村上市と関川村と胎内市,それぞれにヒアリング調査を実施した.それらの調査から,県内における全体の配送の流れや課題を把握し,その後,それらの団体単位での課題を明らかにした.次に,そのような救援物資配送時の実態・課題を考慮した,実態に即した救援物資配送モデルを構築した.本モデルでは,二段階配送と直接配送を混合した配送方法によって配送経路を出力することができ,各拠点における車両の量や,一次配送拠点における在庫量,各車両の最大配送時間の制限等を,設定可能とした.そして,その救援物資配送モデルにおける提案配送方法の有用性を,複数のCASEを設定し,従来配送方法と比較することで検証した.それらの分析から,提案配送方法は従来配送方法と比較して,より災害時の実態に即して有利となることを確かめた.災害時の状況として,災害規模によって配送先の特徴が変化する場合や,各拠点における車両の保有状況が変化する場合,支援者側と配送先の距離が離れる場合,積替え時間が多くかかる場合などにも対応して二段階配送と直接配送の使い分けをして提案配送が従来配送より有利となることを確かめた.