有坂祐悟 降水画像を用いた降水種別と降水強度のAI判定技術の開発 陸 旻皎   現在,気象予報や防災・除雪のために降水種別と降水量を計測・観測する需要があり,それに関する研究が多く行われている.その中で現在主流となっている観測機器は高価であり,多観測地点で観測機器を設けることは難しいのが現状である. 近年ではAI技術の発展が著しく,人間の目で瞬時に視認できる降水種別や降水強度の相対的強さは,AIの画像識別でも実現できると考えられる.AIは機械であるゆえに降水画像からリアルタイムに且つ定量的に降水強度を何mm/hと評価できる能力を有すると思われる.そこで,本研究では,種々の降水に対して画像撮影と降水強度測定を行い,ディープランニングを通してAIに降水画像から降水種別を瞬時に割り出す技術の開発を目的とする. 試運転として行った降水画像のAIによる雨と雪の降水写真は判定ができた.AI識別は降水種類に焦点を当てつつ,降水写真のパターンを識別しており,降水強度の異なるケース,例えば雨1,雨2,も,十分な学習写真が用意されていれば同様の仕組みで識別が可能である.即ち,降水種別と降水強度は区別なく,統合的に扱うことができる.背景を真っ黒にすれば,少ない降水写真(降水強度込み)で深層学習を通して降水種類と強度判別が可能である.これには効果があるが,黒い背景の撮影が技術的に難しいという課題が存在する.背景を黒にすれば,AIによる学習時間が短縮できる.さらに撮影距離,被写界深度を統一すれば,映っている降水(または降水の線)の大きさ・太さ・密度が比較できるために,降水強度の高精度な判定に寄与すると考えられる.深層学習は降水画像データの質に依存するために,背景ノイズのない,黒い背景の降水写真の検討した. 黒い背景で撮影した,1種類の降雪画像と3種類の降水画像の合わせて2400枚程度の画像で深層学習して30枚の降水判定を行った.30枚の降水画像の判定の正解率は100%であった.同じ時間帯・撮影環境で撮った降水画像を使って学習して,同じ環境で撮影した降水画像を使ってAI判定したために,判定精度が異常に高い.もっと多くの降水画像をAI判定してみるべきであるが,撮影回数が少ないためにそれはできなかった.降水強度の段階数(例えば降雨の強さ)は多ければ多いほど,降水画像の違いが少なくなり,AIによる判定は難しくなると考えられるが,本研究はそれを検討できていない.今後の課題である.