髙木 岳 低水流出の減水特性とその季節変化に関する研究 陸 旻皎 河川の低水流出の減水特性は,水資源利用において重要である.減水特性を表現する方法として,分数減水式がある.安藤ら(1985)は,低水流出の分数減水式の定数を季節ごと(春: 3 ~ 5 月,夏: 6 ~ 8 月,秋: 9~11 月,冬: 12月~2月)に求め季節性と地質の関係を示した.この分数減水定数は,値が大きいと減水が速いことを示す.陸(2023)は,減水解析の効率的な方法として,日流量から減水曲線を抽出する方法を提案した.また陸(2023)は,樹冠蒸発を除いた蒸発散を土壌蒸発散と定義し,季節変動する減水定数を地質など流域特性によって決まる流域固有減水定数と季節性を有する土壌蒸発散に分け,推定する方法を提案した. 本研究では,まず土器川の常包橋流域において減水定数を計算し,既往研究と同様に減水定数が季節性を持つことと蒸発能力との相関があることを確認した.また,常包橋流域は森林に覆われており,蒸発散は植生によるものであると考えた.そこで,日本各地の森林流域を対象として,減水定数の解析を行った.陸が提案した日流量から減水曲線を抽出する手法が本研究の対象流域において適応するか,安藤らが求めた分数減水定数と本研究の手法で求めた分数減水定数を比較した.相関係数が高かったため,陸が提案した手法は日本各地の流域で適応すると考えられる.これより,本研究の手法により求めた減水定数を用いて解析を行った.流域固有減水定数を仮の土壌蒸発散より求め,どのような傾向を示すか解析し,指数近似式を作成し,流域ごとに流域固有減水定数を求められるようにした.その近似式より,観測所の緯度から推定された土壌蒸発散を用いて,流域固有減水定数を算定し,流域特性との関係を検討した.また,地質区分の基準値より複合地質流域の流域固有減水定数を推定した.本研究では,流域固有減水定数を土壌蒸発散より推定する方法を提案し,地質区分との関係性を検討した.これにより,減水曲線と流域地質の関係を検討するとき,流域固有減水定数を用いて議論することが有用である可能性を示した.また,複合地質流域の流域固有減水定数を推定し,推定式の妥当性が示されたと考えられる.