小林 徹 降水短時間予報の誤差特性とその土砂災害リスク評価への応用 陸 旻皎 近年の異常気象より災害の頻発化・激甚化がみられており,土砂災害の平均発生件数も上昇傾向にある.これらを受けて更なる国土強靭化へ向けた動きがみられており,適切な災害対策を行うにあたって基本となる災害の発生リスクの評価が重要となってくる. 現在土砂災害のリスク評価には,土壌雨量指数(SWI)が使用されているが,警報発令の基準となる警戒基準雨量線(CL)の設定に高度な知識や技術が必要である. 陸らは,土砂災害のリスク評価の指標として,土壌水分欠損量(SMD)が,基準線の設定が容易になることから良い指標になると示した.また,災害時の単位時間あたりのSMDの変化率が降雨量のみで表せることから,SMDの計算に予測の雨量を使用することで,将来数時間先の土砂災害リスク評価ができる可能性があるとしている.これにより,災害の早期警戒を行うことができる可能性がある. 本研究では,この理論に対して予測雨量として降水短時間予報による予測結果を使用し,1時間先のSMDを推定することで,1時間先の土砂災害リスク評価の可能性について調査することとした.予測雨量を使用するにあたって,降水短時間予報による予測結果が有する誤差特性(どのような分布に従って発生するのか)を考慮する必要があるが,一般に明らかになっていない問題点がある. 以上より,本研究では,まず降水短時間予報による予測結果が有する誤差特性を簡易的に調査し,誤差特性を考慮した1時間先のSMDをアンサンブル的に予測した.予測した結果より,災害の警報を発令する任意の基準を超える確率を求めることで,1時間先のSMDを推定することによる災害の早期警戒を行うことができる可能性について調査した. 結果として,本研究で取得したデータに関して,降水短時間予報による予測結果が有する誤差特性は正規分布に従う傾向があった.正規分布を仮定した際の1時間先の土砂災害リスク評価は,期待値より下側の任意の確率(25%)を超過する割合が多くなることから,本研究で使用したデータでは,土砂災害の早期警戒を行うことは可能であることがわかった.