小柳 颯輝 光学式固体降水種別判別・降水強度計の降水量算定手法の改良に関する研究 熊倉 俊郎 降雪観測における降水量計の補足損失や,降水種別判別をする観測器は高コストといった課題がある.そこで,熊倉ら(2018)によって安価かつ補足損失を受けにくい光学式固体降水種別判別・降水強度計(PDS)が提案された.遠藤(2020)は,PDSの推定降水量の風向風速依存性についての検証を行い,推定降水量には風向風速依存性が存在することに加え,その補正式を示した.この補正式を用いるには,風向風速計をPDSと同時に設置する必要があり,コストの観点からもPDS単体で風の影響を補正することが望ましい.また,降水種別が推定降水量に与える影響についての検証が充分に行われていない. 本研究では,これらの課題に対して,PDS単体で風速成分を推定する手法を提案するとともに,降水種別が推定降水量に与える影響について検証を行う. 降水種別が推定降水量に与える影響を検証するため,雪片に近い降雪Aと霰に近い降雪Bを生成できる人工降雪実験装置を用いた室内実験を行った.降雪Aでは推定降水量は実測値に比べて5%程度の過小評価にとどまったが,降雪Bではおよそ2倍の過大評価が起こった.これは,推定降水量の計算パラメータである疑似落下速度の落下速度との比例関係が,降雪種別の変化に伴って一定でなくなったことに起因することが示唆された. PDS単体で風速成分を推定する手法として,経路長と照度の変化から得られる波形を用いて,PDSの照射領域に降雪粒子が入射する角度である入射天頂角を推定し,落下速度を組み合わせることでPDSの光軸上の風速成分を推定する手法を提案した.波形と入射天頂角の関係を明らかにするには,風速成分と落下速度を伴う観測データが必要となるが,自然環境下でこれらを安定させることは難しい.そこで,回転台と横風発生装置を用いて任意の風向風速を設定し室内実験を行った.室内実験下においても,降水粒子の形状を完全に揃えることは難しく,形状の違いや乱流によって落下経路はばらつき,それに伴って観測データもばらつくことが予想される.そこで,モデル経路から波形と入射天頂角の関係のモデル関数を作成し,実験データにフィッティングさせ,波形から入射天頂角を推定する近似式を示した.また,実験結果から,実際に波形から入射天頂角を推定することが可能であることが示唆された.