BATBAYAR MARGAD 大規模低気圧を再現した橋桁周辺の塩害環境の予測解析 中村 文則 冬季の海岸では季節風の影響で波浪と気象が厳しくて、大量の海水飛沫が発生し、鋼・コンクリート構造物が塩害により劣化する問題がある.既往研究で海水飛沫の観測と解析により,風速,風向,波浪条件が海水飛沫量に影響することを示し,数値解析により海水飛沫の時間・空間的変動を予測できることを明らかにした.しかしながら,海水飛沫量の予測計算に入力する気象庁などの気象・波浪の観測値は,実橋梁と比較して非常に観測点が少ないため,橋桁周辺の飛来塩分量を予測する際に正確な境界条件を入力できないことが問題となっている. そこで,本研究では大規模な低気圧による気象・波浪作用から飛来塩分までを統合して予測できる数値シミュレーションの構築を行った. この数値シミュレーションの構築は,大規模な低気圧による気象・波浪作用を予測するモデルと橋桁に作用する飛来塩分を予測するモデルを組み合わせたものである.このモデルは,橋桁の形状や地形条件などを汎用的に考慮し,橋梁周辺の気象,波浪および潮汐変動を再現するとともに,それに応じた橋桁に作用する飛来塩分を統合して計算できるものである. 構築したモデルの妥当性の検証には,2018年2月18日から2018年2月19日までの期間において,発生した大規模低気圧を対象に,新潟県上越市の名立川河口部に位置する名立大橋で行われた飛来塩分量の調査結果を使用した. その結果,予測モデルによる計算結果は,過去に発生した大規模な低気圧の観測値と比較して,風速,波高および潮位の値が概ね一致しており,各時間の風況・波浪(波高)・潮位の変動傾向を再現できることが明らかになった.次に,橋桁に作用する飛来塩分の計算結果では,空間的な風および塩分量を概ね再現できていることがわかる.さらに,境界条件となる橋桁に作用する風況・波高・潮位は塩分に大きく依存しており,境界条件が詳細に計算できていれば,構造物周辺の塩分量の時間的な変動を十分に予測できたことが示された. 結論としては,大規模な低気圧を予測するモデルを用いることで,気象・波浪作用を詳細に予測できた.また,その気象・波浪作用を境界条件として用いて,沿岸部のコンクリート構造物に応じた飛来塩分の予測ができた.