ENKHTUR KHAS-ERDENE ステンレス鉄筋を用いた鉄筋コンクリートの耐久性に関する暴露試験 下村匠 能生大橋は,塩害による鋼材が著しく、2012年に架け替えられ、能生大橋はステンレス鉄筋を用いた初の直轄国道橋として2013年に供用を開始した.ステンレス鉄筋の普及のためには,追跡調査を実施し,データを蓄積しておくことが必要である.能生大橋に近傍に暴露供試体を設置し,内部の鉄筋の腐食について継続的に調査を行うこととした.かぶりは10mmと実際の構造物よりも小さく設定されており,塩害促進条件下でステンレス鉄筋の有効性を検証するおよび複数種類の鉄筋を組合せた場合の耐塩害性を把握し,解体調査を行い,実環境下におけるステンレス鉄筋の耐塩害性を把握することを目的とする. 2022年の外観目視調査では,短異-4の供試体のみ腐食ひび割れが見られた.他の試験体は変状なかった.中性化深さ測定結果は,全供試体によって中性化は認められなかった.中性化の予測計算でも中性化しないため,妥当な結果であると判断できる.全塩化物イオン濃度測定結果は,短異-4の供試体の結果は1cm以降に塩化物イオン量が最も多いであった.外観目視調査で,短異-4は腐食ひび割れが発生していたことは明らかになって,腐食ひび割れから塩分が浸透して全塩化物イオンが高くなっていると考えられる.3年目と10年目の結果を比較すると,表面からの距離が多くなるにつれ,10年目の方が塩化物イオン量は多くなっていくことが明らかとなった.自然電位測定では,ステンレス鉄筋はいずれも腐食していないことが分かった.短異-4の供試体が外観調査で腐食ひび割れが見られていて,自然電位測定でもかなり高い結果で腐食していた.鋼材腐食面積の10年目の測定は,画像処理ソフト“Simple Digitizer”を用いて座標を測定し,腐食面積量を算出した.3 年目の鋼材腐食面積率と異なる算出方法であるため,正しい比較でない可能性がある。腐食面積率(短異)と腐食減量試験結果(短同)では, 短同-5と短異-4の普通鉄筋のみ腐食したことが分かった. 10年暴露した試験体を測定したが、腐食していたのは短同-5と短異-4の普通鉄筋のみで、ステンレス鉄筋の腐食は確認できなかった.中性化試験において、全供試体で中性化は見られず、予測計算と同様の結果となった.鋼材腐食面積率・腐食減量試験でも普通鉄筋はステンレス鉄筋・エポ筋と比較するとかなり腐食している結果になった.普通鉄筋が腐食してしまう環境下でもステンレス鉄筋はすべて腐食が確認されなかった.塩害促進環境下で腐食は確認されなかったので、長期試験体でも腐食していないと予測されるが、今後長期試験体を解体して腐食を確認する必要がある.