篠地叡生 高潮シミュレーションを連携した橋桁作用力の予測解析 中村文則 昨今,地震や津波,高潮といった自然災害によって,多くの社会基盤構造物が被害を蒙っている.特に高潮は,現象に関する予測技術に比べ,橋梁に作用する外力に関する研究が非常に少なく,波力推定方法も極めて限定的な条件であるため,予測手法が確立されていないという課題がある.本研究では,橋梁に作用する高潮波力を予測する汎用的な手法の確立を目的として,高潮シミュレーション技術を連携した橋桁作用力の予測解析モデルの構築を行った.さらに,過去に発生した高潮現象の再現解析を実施し,構築したモデルの妥当性の検証を行った. 構築したモデルは,台風(ハリケーン)による高潮現象と波浪が橋梁に作用する流体外力を予測するモデルを組み合わせたものである.このモデルは,橋桁の形状や地形条件などを汎用的に考慮し,橋梁周辺の気象,波浪および潮汐(海水面)変動を再現するとともに,それに応じた橋桁への流体外力を統合して計算できるものである.計算の流れとしては,大気海洋波浪結合モデルを用いて,橋梁周辺の地形や風況,波浪や海面変動などの高潮現象を計算し,その結果を境界条件として,橋桁に作用する流体外力の計算を行うものである.構築したモデルの妥当性の検証には,2005年に米国に来襲したHurricane Katrinaによって発生した高潮現象と橋梁の落橋状況の調査結果を使用した. その結果,予測モデルによる計算結果は,過去に発生した高潮現象の観測値と比較して,風速,波高および高潮による海面水位の最大値に多少のずれが生じているものの,時系列的な変動傾向がおおむね一致することが明らかになった.橋桁に作用する波力の計算では,高潮波力が橋桁の高さと波高・潮位に大きく依存しており,橋桁下面に波が作用する時に流体外力(波力)が最大値となることがわかった.さらに,その結果は,Hurricane Katrinaによって落橋した橋桁の状況を再現できており,高潮現象によって発生する波浪とそれに伴う橋梁への流体外力をおおむね再現できることが明らかになった. 以上の結果より,本研究で構築した高潮現象に応じた橋桁への外力予測モデルは,周辺地形や橋桁形状を汎用的に考慮して,橋桁周辺の高潮現象と橋桁に作用する流体外力を高精度で予測可能であることが示された.