PARMYEN SUNKHAR 腐食減肉の生じた鋼I桁の腐食部応力の補正法に関する研究 岩崎 英治  第2次世界大戦後の1955年から1973年にかけて日本では社会インフラ施設,特に道路橋の設備が多数建設された.現在,建設後50年以上経過する橋梁の割合は約34%であるが,,今後10年ではその割合が59%,20年ではおおよそ80%まで増加すると予想されている.したがって,橋梁の損傷の主な原因である腐食損傷に対する適切な維持管理が要求される.  腐食は主に桁端部や支承部に生じることが多いが,床版からの漏水又は堆積物などが原因で支間部にも発生するケースがある.そこで,支間部の腐食応力を簡単に求められると有用であると考えられる.腐食部応力を求める方法としては「FEM解析による方法」と「力のつり合い条件式による方法」という2つがある.しかし,FEM解析には非常に時間かかるし,力のつり合い条件式には腐食長さを考慮できないという欠点がある.  本研究の目的は,腐食減肉の生じた鋼I桁の下フランジの腐食部応力を簡単に求めるため力のつり合い条件式で求めた応力を腐食長さの変化に応じて補正できる補正係数をFEM解析を用いて提案することである.  解析条件は4節点シェル要素でモデル化し,両端部に曲げモーメントを配置させ,桁の中央部に腐食減肉が生じ,腐食率は10%から90%まで10%ごとに板厚を減少させるとした.本研究では単純非合成鋼I桁を対象とする.そこで,支間長が20mから55mの間で5パターンであり,各支間長の場合上下フランジの寸法が異なる各ケースで,全て30の断面について解析を行う.  それで,全ての断面における解析結果を基に下フランジとウェブの断面積比β1を代入するだけで,腐食長さ及び腐食率の考慮もできる補正係数 (k) が得られた.補正係数(k) をパラメータ「A」と「B」で指定し,それらをそれぞれパラメータ「a1」と「a2」,「b1」と「b2」といったパラメータで表した.この補正係数を用いることで,下フランジの腐食応力を推定式より正確に推定できる.  補正係数の精度に関しましては,腐食長さが非常に短い場合は補正係数の誤差が大きいかったが,腐食率が80%以下で,腐食長さが大きくなるほど誤差が3%に収まっている.また,下フランジとウェブの断面積比(β1)≦上フランジとウェブの断面積比(β2)という条件を満たす断面については全ての腐食率において,誤差が2%未満で,精度がより高いという結果に至りました.これは,鋼I桁の図心の腐食による移動に関連すると考えられる.β1>β2のときは図心の移動は大きいが,β1≦β2のときは腐食による図心の移動は小さい.