SAO SAMBO CFRPによる鋼部材の振動低減に関する研究 宮下剛 近年鋼製煙突の耐震補強の需要が高まっており,より効率的な補強が求められている.これまでCFRPシート接着により,固有振動数や減衰を向上させる実験として平鋼による基礎検討が実施されてきた.しかし,実構造物を想定した鋼部材を対象とする検討は行われていない. 減衰率と応答値の関係は,構造物の減衰率を上げると応答値が下がるため,耐震設計上有利になる.減衰率は材質によるところが大きく,鋼材で補強しても変化しない.そこで,ポリウレアパテやCFRPシートを組み合わせることで減衰率を変化させることができないかについて,鋼製煙突の鋼部材を想定した供試体を対象に検討を行う.本研究は炭素繊維シート(FSS-HM-600)を使用することにより,鋼部材の振動抑制の効果を明らかにすることを目的にした. 研究の試験体は実構造物の鋼部材を想定した供試体は二種類あり,H形鋼と鋼管である.計測の状態では各試験体の下部をベースプレート(横幅600mmx縦幅600x厚さ32mm)の中央で溶接し,振動計測の試験を効率に実施するために実験室の床にベースプレートをM36六角ボルト4本で固定し,振動計測を行う. データの分析の方法では, 計測した加速度データを,VP/Data Viewer-GL900のソフトウェアを用いて,PCに読み込む.そして,Matlabで,FFT(高速フーリエ変換)により,周波数解析を行い,加速度データの実数と共役複素数を得て,パワ―スペクトルを算出する.周波数fとパワ―スペクトルについてグラフを作成し,卓超する箇所から1次モードの固有振動数を同定する.減衰化については,同定した1次モードの固有振動数にもとづいて,加速度波形にバンドパスフィルターを適用する.そして,ヒルベルト交換を用いて,加速度波形の包絡線から,振幅の減少率を求め,減衰比を算出する. 本研究の結果について, 固有振動数は実験値と比較すると,論理値と概ね整合した結果となった.炭素繊維シートの積層数を増加することで,固有振動数がわずかではあるものの,増加することを確認した.減衰化の結果では,炭素繊維シートを積層することで,H形鋼の減衰の効果が増加し,鋼管の減衰の効果はほとんどないことを確認した.実験の結果から,今回の実験の範囲では,わずかではあるものの,固有振動数ならびにH形鋼の減衰化の増加が確認された.振動抑制の効果をさらに向上させるためには,炭素繊維シートの養生温度などの影響が考えられるため,さらなる検証が求められる.