KANGSAOVANG BEE 正曲げを受ける合成桁の限界状態に関する研究 宮下 剛 道路橋示方書(平成29年11月)の改定では,許容応力度設計法から部分係数設計法にもとづく,限界状態設計法に移行し,新たな限界状態が定められた.限界状態は橋の耐荷性能の照査にあたって,橋の状態を区分するために規定されており,状況と状態の組み合わせ及び状況と状態の組み合わせごとの実現性の度合いで定義されている.そして, 橋の耐荷性能の標準として,橋の状態を適切に区分し,区分の限界の状態を定義したうえで,設計状況下での橋の状態を評価し,これが限界状態を超えないことの信頼性を測る方法を採っている. ここで、各限界状態は以下とされている. ―限界状態1:部材等としての荷重を支持する能力が確保されている限界の状態 ―限界状態2:部材等としての荷重を支持する能力は低下しているもののあらかじめ想定する能力の範囲にある限界の状態 ―限界状態3:これを超えると部材等としての荷重を支持する能力が完全に失われる限界の状態 課題として,H29道示では,橋の限界状態を各部材の限界状態で代表させて良いとされてはいるものの,各部材の限界状態ならびに照査方法が明確ではないことが挙げられる. そこで、本研究は正曲げを受ける合成桁を対象に,過去に実施した合成桁の静的曲げ試験のデータをもとに,実験データの分析を行い,各部材のイベントを抽出する. そして,限界状態1〜3の候補を検討し,各限界状態の試算を行う.限界状態と照査方法について検討することが目的である. 限界状態と照査方法として、限界状態1として下フランジが降伏ひずみに達した状態を,限界状態2として下フランジと腹板の一部が降伏して床版上面のひずみが2000μに達した状態を,限界状態3として全塑性モーメントに達する状態を想定した. 結果、本研究では計算値と実験値を比較するとほぼ同じ値になり,計算値と実験値の誤差が小さい. 以上より,いずれの限界状態についても,計算結果は実験結果に概ね近い値を与えることから, 提案手法は限界状態の一つの候補になるものと考える.