北光樹 プレキャストFRPを用いた鋼橋桁端部の補修 宮下剛 鋼橋桁端部の補修においては,複数の部材が入り組んでいて煩雑なために過大な施工設備を導入できないこともあり,補修方法の一つとしてCFRP接着工法が挙げられる.しかし,現行のCFRP施工マニュアルでは最大で35層ものCFRPシート施工を現場で行う必要が生じる一方で,部材が入り組む桁端部ではCFRPシートの施工も煩雑となるため,CFRPシートの貼り付け工程のみで10日以上を要するケースも珍しくない.こういった背景より,現場の省力化および工期の短縮を目的として,プレキャスト化したCFRP(以下,プレキャストFRP)を用いる工法が望まれている.従来のCFRP接着工法ではCFRPシートを1枚ずつ現場にて積層する必要があるのに対して,プレキャストFRPを用いた工法は,事前に作製したプレキャストFRPを一度貼り付けるのみでよいため,大幅な現場の省力化および工期の短縮が可能となる. 本研究では,鋼構造物桁端部の補修に用いる材料として,プレキャストFRPの有効性の把握を目的とする.補修は,腹板と下フランジ,垂直補剛材の3面に対して行うこと(以下,3面施工)を基本とし.以下の補修を施したケースについて実験および検討を行う.1)現行マニュアルに従った定着長,ずらし量を有するプレキャストFRPによる3面プレキャストFRP施工の補修を施したケース.2)定着長およびずらし量を短くしたプレキャストFRPによる3面プレキャストFRP施工の補修を施したケース.3)腹板あるいは垂直補剛材と下フランジの2面に対して, 2面プレキャストFRP施工の補修を施したケース.4)不陸修正を施す前に,高伸度弾性パテ材施工を行うケース. その結果,1)の補修を施した場合,欠損状態からの大幅な耐力の回復がみられたほか,従来のCFRPシート多層積層施工による補修効果を上回る耐力および緩やかな破壊挙動が確認できた.2)の補修を施した場合,定着長およびずらし量の不足を要因とするCFRPシートのはく離が生じ,脆性的な破壊による急激な耐力低下がみられた. 3)において腹板を補修した場合,補修範囲のすぐ外側にて最も大きく生じる面外変位によるCFRPシートの早期はく離に起因して十分な耐力の回復効果は得られなかった.一方で,垂直補剛材を補修した場合では十分な補修効果が確認できた.4)の補修を施した場合においても,十分な補修効果が確認できた.あわせて,本研究におけるすべての実験ケースにおいて,圧縮応力度を評価基準とする設計上の安全性の目安を満足することが確認できた.