森田大貴

異なる土の力学特性に与える段階ひずみ速度変化の影響

豊田浩史

実地盤の変形は一定の速度で進行しているとは限らず，破壊が進んでいく中で速度が変化する可能性も考えられる．これらの速度変化による力学的性質の変化の傾向を把握することは今後の土構造物設計や地盤改良において有意義である．その中で，地震時の残留変位を算定する方法として簡易ニューマーク法が存在する．これは，設定した降伏震度より大きな地震波のみを抽出し，その波からの変換によって残留変位を算出している．しかしながら，土の変形速度が変わることによる力学特性への影響が考慮されていない．
　そこで本研究では，せん断速度の段階変化が土の力学特性に与える影響を調べた．実験は中空ねじりせん断試験装置を用いて，せん断中の中間主応力および平均主応力が一定の条件のもとで，あるせん断ひずみでせん断ひずみ速度を急激に変化させるSTEP 載荷を行った．せん断ひずみ速度変化は次の3種類である：10倍変化を4回（5段階変化），100倍変化を2回（3段階変化），10000倍変化を1回（2段階変化）．また，STEP間の速度一定区間のせん断ひずみも3種類設定した：0.05%，0.1%，0.2%．土の性質による違いの検討を行うために，ニュージーランドカオリン（NZカオリン）とベントナイトを配合したニュージーランドカオリン（ベントナイト配合試料）を用いた．
　本研究により，せん断時のアイソタック則に関わる以下の知見が得られた．
1. STEP載荷試験において，せん断ひずみ速度が大きくなると偏差応力が上がり，せん断ひずみ速度が小さくなると偏差応力が下がった．
2. STEP載荷を行うせん断ひずみが大きくなると，NZカオリンでは，この偏差応力の増減量が減少すしたが，ベントナイト配合試料では変化しなかった．
3. STEP間の速度一定区間が長くなると，NZカオリンでは，STEP載荷で増減した偏差応力の消失が見られたが，ベントナイト配合試料では明確な消失は見られなかった．
4. 両試料とも，STEP載荷による偏差応力の増減量は，現在のせん断速度に関係せず，そのSTEPの前のせん断ひずみ速度の倍数で決まり，倍数の対数に比例する．