Mangone Sambe 砂の微小ひずみ変形特性に与える異方応力状態の影響 豊田 浩史 砂や粘土地盤は通常異方的な力学特性を有している.異方性と変形特性の理解は,地盤の変形解析を行う上で,大変重要なものである.特に,精度良い初期せん断剛性率は,地中構造物を合理的に設計する上で,主要な材料定数となる. 本研究では,微小ひずみでの砂の変形特性(せん断剛性率)に及ばす異方応力の影響を取り扱う.豊浦砂を用いて,単調三軸圧縮・伸張試験を行った.固有異方性の影響を調べるために,異なる堆積角(0,45,90°)で供試体を作製した.誘導異方性を調べるために,供試体を異なる応力比,K= 0.25, 0.4, 0.6(圧縮異方圧密),K= 2, 3(伸張異方圧密)で圧密した.K=1は等方圧密となる.正確な変形特性を計測するため,ベンダーエレメント(BE)試験と微小ひずみ(LSS)試験を同じ供試体において行った.せん断は,比較できるように同じ状態より,圧縮と伸張載荷が行われた. BE試験結果より,堆積角が0° から90°に増加すると,初期せん断剛性率も増加した.圧縮異方圧密で,K=0.4から1へ変化すると,初期せん断剛性率は減少した.伸張異方圧密で,K=1から2へ変化すると,初期せん断剛性率は増加した.しかしながら,K=0.4から0.25とK=2から3までの区間では,初期せん断剛性率は減少した. 圧縮LSS試験結果より,応力比がK=0.25から0.4の区間では,割線せん断剛性率が大きくなり,K=0.4からK=3の区間では,割線せん断剛性率が小さくなった.伸張LSS試験結果より,応力比がK=0.25から2の区間で,割線せん断剛性率が小さくなった.微小ひずみ領域(0.001%以下)においては,圧縮・伸張載荷とも割線せん断剛性率はほぼ同じとなった.0.001%から0.1%のひずみ領域では,伸張載荷の方が圧縮載荷より割線せん断剛性率が大きくなった.この差は,K=1に近づくほど,小さくなった.