野田 裕太郎 急曲線掘進時のシールド操作指標の開発 杉本光隆  近年,トンネルの線形やシールド機の断面形状の複雑化により,施工前にシールド機の制御方法やそれに対するシールド機の挙動を検討することが必要になる場合がある.施工実績によると,曲線掘進時のシールド機の挙動は,3つの操作条件,すなわち,①ジャッキ推力・ジャッキモーメント,②中折れ機構(中折れ角度,向き),③コピーカッター(長さ,範囲)によって,規定される.しかし,これら3つの操作条件は,共線性を持ち,また,シールド機の形状の影響を受けることから,一意に決めることは困難である.これを受け,現在,現場実測データにAIを適用し,計画線形に対してマシンの操作方法を提案する手法の開発が行われている.本研究ではシールド機の操作条件と挙動との関係を分析し,AIに用いる特徴量を把握することを目的として,以下を実施した.  (1)シールド機操作条件の特徴量の考察  シールド機挙動制御のための操作,およびシールド挙動に関する指標について,マシン形状やトンネルの線形などの幾何学的な条件や既往の施工実績から考察する.  (2)現場計測データの分析  シールド掘進で得られた各種計測データを用いて,シールド機の操作条件とシールド機の挙動の関係を分析する.これにより,実際の操作手法を反映したシールド機操作条件の特徴量を考察する.  (3)シールド機操作条件の感度分析  シールド機動力学モデルを用いて,(2)の現場条件で複数のトンネル線形(急曲線)のシミュレーションを実施し,各ケースの操作条件とシールド挙動の関係を分析することにより,操作条件が変化する緩和曲線区間において,操作条件がシールド挙動へ与える影響と,操作条件同士の交互作用について考察する.  以上の検討の結果,上記の3つの操作条件を表すシールド機の操作指標が,シールド機の挙動(①掘進速度,②シールド軌跡の水平曲率,③シールド軌跡の鉛直曲率)に及ぼす影響を把握し,また,感度分析によって得られたデータを用いた重回帰分析により,緩和曲線におけるシールド軌跡の水平曲率に対して,ジャッキモーメントよりも中折れ機構とコピーカッターの影響が大きいこと,中折れ機構とコピーカッターは交互作用を有していることを確認した.