伴 武 新潟県内の主要港の観測データを用いた波浪特性の把握 犬飼直之  2022年8月16日14時過ぎ,新潟県柏崎市の柏崎中央海水浴場で遊泳中の男児と助けようとした祖父が死亡する事故が発生した.事故解析には,事故発生時の海象の把握が重要となる. 新潟県の海象の把握に用いる波浪観測データは国土交通省が計測している”ナウファス” が主要港の新潟港と直江津港に,新潟県が管理運営しているものが柏崎港などに設置してある.ナウファスは安定的に計測できているものの,新潟県のデータは事故発生日を含め,不具合等で欠測することがある.近年では波浪特性を波浪推算で把握しているため,波浪観測データがある2014年及び2020年6〜12月の新潟県内の各港での波浪観測データから県内沿岸の波浪特性を把握することを目的とする.  事故発生時の天気図は低気圧が北海道網走付近を中心に存在し,新潟県では西の風であったと考えられる.NetCDF化した数値予報GPVデータから直江津港の海上風を読み取ると,14時は若干の南寄りの西の風であり,その時の直江津港の波向も同じ向きであり,風向と波向は一致していることが確認できた.また,柏崎港の海上風も直江津港と同じ向きであったため,波向も同じであったと考える.直江津港の波向を見ると事故発生前は西向きであったが,その後短時間で北西に変わった.柏崎港も同様に変化したとすると,防波堤の位置関係から事故発生前の波は防波堤の陰だったが,短時間で直接入射する向きとなった.事故発生日の柏崎港の波高を推算するため,事故発生時と類似する天気図・海上風の日時を抽出して波高の比率を求めると0.936であり,事故発生時の柏崎港の波高は2.27mと推算された.また,事故発生前の波を回析波として波高を計算すると0.3〜0.7m程度であった.  一般的に高波浪となる条件として冬型の気圧配置がある.その日時を60個抽出した.波高の比率の平均を計算すると新潟港基準の柏崎港で約1.021倍,直江津港基準の柏崎港で約1.020倍であった.若干の差はあるものの,顕著な差は見られなかった.平均波向では,新潟港-31.6度,柏崎港で-33.8度,直江津港で-37.4度であり,顕著な差は無く,北西の波であることがわかった.他に新潟県海上で強風となるパターンに日本海に低気圧が存在する時があり,その日時を24個抽出した.波高の比率の平均を計算すると直江津港基準の柏崎港で約1.016倍であり,若干の差はあるものの,顕著な差は無かった.平均波向では柏崎港で-86.3度,直江津港で-74.0度であり,顕著な差は無く,西の波であることがわかった.