榎本峻也 中山間地の急流河川における天然ダムの危険度評価と対策 細山田得三 中山間地の河川では,地震や豪雨による不安定斜面で斜面崩壊が起こり,土砂によって河道を閉塞することで,上流側の水の流れを堰き止め,水が貯留される天然ダムを形成させることがある.天然ダムが崩壊すると下流側において天然ダムの決壊により土砂を含んだ流水が流下し,鉄砲水や土石流などの大きな災害を引きおこす危険性が生じる。わが国のこの種の災害は平成30年北海道胆振東部地震で日高幌内川に高さ50mの大規模な天然ダム、十津川大水害では天然ダム形成後2.3時間ほどで決壊したという記録が残っている.日本では地震や豪雨など天然ダムを形成するための自然災害が頻繁に発生する。そのため短期で崩壊する大規模な天然ダムが発生すると大災害を引き起こす危険性が生じる.そこで,被害を減少させるために事前に対策を行う必要があると考えた.本研究では、中山間地の河川で天然ダムが崩壊した時の数値モデルから河川の挙動をシミュレーション化し、砂防堰堤の規模,天然ダムの規模の変化により,流速・水深の変化を比較することで,天然ダムの規模に応じた砂防堰堤の効果を調べることを目的とします。  平成16年の中越地震によりに天然ダムが発生した芋川の地形標高分布図(DEM)を元に、適当な地点で流量を与え、非線形長波方程式を用いて河川の流れを再現した。  天然ダム、砂防堰堤を再現するために、適当の地点の標高を引き上げた。天然ダムは30mから50m間の2.5m間隔で9ケース、砂防堰堤は0m、10m、20mの3ケースの計27ケース行った。又、適当な時間で元に戻すことで、天然ダムの崩壊を再現しました。  本実験では砂防堰堤なしのケースでは,天然ダムの規模が大きくなると,流速・水深が増加するが,ある場面で水深が大きくなると川幅が大きくなるため,流速・水深の上昇率が小さくなることが分かった.又,天然ダムの規模が大きくなるほどピーク流速・水深に到達する時間が短縮されることが分かりました。 砂防堰堤を設置すると,天然ダムの規模の増加に対し流速・水深の増加がほとんど比例関係という結果が得られ、砂防堰堤の規模が大きくなるほど,流速・水深の上昇率が低下しました。又、砂防堰堤なしのケースでは,ある場面で流速・水深の上昇率が低下したが,砂防堰堤ありのケースでは,ほとんど比例関係であるため,天然ダム50mの規模で砂防堰堤10mのケースで,流速・水深を上回ってしまった.多大な流量に対し,小規模な砂防堰堤を設置してしまうと,流れを低減する効果より,越流落差による加速力が上回ってしまうため,中途半端な規模の砂防堰堤は逆効果になってしまうケースがあることが分かった。