渋谷 航平 波浪場における遊泳中の人体の挙動に関する研究 犬飼 直之  日本では,毎年多くの水難事故が発生しているため,様々な水域で事故の調査及び解析が実施されており,既往解析では,水難事故発生場所での水面や波浪,流況を再現している.この数値解析では,水面変動のみを考慮しており,人体の挙動は考慮されていないため,人体の溺水状況はおおよそで考察している.そのため,水面変動挙動とその影響による溺水状態前の人体の上下挙動を把握する数値モデルが必要であると考える.また,他の既往研究調査として,河川内に入水したときに砂地が急傾斜となっており,足を取られ,急に河川内に沈んでしまう水難事故の現象も確認されている.そのため,落水及び沈水したときの人体の上下挙動についても把握することが重要であると考える.本研究では,胴体や頭部,手足等の人体の部位の体積や浮力を考慮し,波浪場における人体の上下方向の振動挙動を把握するための数値モデルを作成した後,実験を行い,数値モデルの確からしさを検証することを目的とする.  水面変動時の人体の上下挙動を把握するために,浮力や速度,加速度等から変位時間あたりの頭頂部位置の移動距離の計算及び人体の各部位の推算を行い,水面付近での水面変動時の人体の上下挙動を把握するための数値モデルの構築を行った.  構築した数値モデルの確からしさの検証及び落水,沈水を想定した水面付近での人体の上下挙動を把握するために,プールを用いて実験を行った.構築した数値モデルによる計算値と実験による実験値を比較した結果,実験値及び計算値が同様な挙動であったことが確認できた.このことから,今回の実験では,落水及び沈水を想定した水面が静水時での人体の浮上挙動を把握することができた.  波浪場を想定した水面付近での水面変動と人体の上下挙動を把握するために,ペットボトルを疑似人体とし,造波水路を用いて実験を行った.構築した数値モデルによる計算値と実験による実験値を比較した結果,実験値及び計算値で水面変動に対して疑似人体の上下振動の上昇量及び下降量で差が生じている箇所が確認されたが,上昇及び下降のタイミングは同様の挙動を確認できた.波浪場における水面変動挙動と溺水状態前の人体の上下挙動に関して,構築した数値モデルを用いることで水面変動と人の呼吸タイミングを把握することができると考える.以上より,構築した数値モデルの確からしさを検証することができたと考える.また,構築した数値モデルを用いることで人体の溺水状況をより詳細に把握できると考える.