篠田旺志 新潟県周辺海域での洋上風力発電に関する基礎的研究 犬飼直之 新潟県胎内市と村上市南部の沿岸域が2021年9月に国から再エネ海域利用法に基づき促進区域に指定され,着床式洋上風力発電の導入に向けた取り組みが進められている.村上市胎内市促進区域がある新潟県北部海域では周辺の地形や季節風の影響を受け,季節や風車の位置により発電能力に違いが出る可能性がある.そこで本研究では,促進区域を含む新潟県北部海域についてMSMを用いた風況の把握や,海域の波浪推算,Renewables.ninjaによる設備利用率の計算などから,海域の発電能力や諸条件の把握を行った.また,秋田県,千葉県,長崎県沖にて着床式洋上風力発電が検討されている促進区域6区域と村上市胎内市沖促進区域について発電能力などの比較を行った.そして得られた知見から.新潟県の村上・胎内市沖促進区域以外の海域での洋上風力発電導入の可能性の検討を行った.その結果,新潟県促進区域付近の海域の年平均風速は5.3m/sで,100m地上高の風速は6.7m/sと安定した発電が行われるとされる基準を満たしているが,他の促進区域と比較すると最も低風速な海域であった.また,新潟県沖の海域においては,冬季は風速が増大し,高い発電効率が期待されるものの,夏季の風速の低下により通年の安定した発電は難しいと考えられる.村上市胎内市沖促進区域付近の海域では,海域の南部では周辺地形の影響から多方向からの吹送は確認されたものの,海域全体で冬季の強風時はWNW風が卓越する.また,季節風と海陸風の方向が一致しているため,風車が効率よく風を受けることができる海域である事がわかった.新潟県村上市胎内市沖促進区域の年間設備利用率は24.9%〜27.5%と風速と同様に比較を行った促進区域内で最も低く,今回の計算条件ではNEDOの指標を満たす年は無かった.しかし,実際に導入される大型かつ高効率な風車では更に設備利用率が向上すると考えられる.新潟県の海域においては着床式の洋上風力発電施設が検討される海域の中で村上市胎内市沖促進区域が最も好条件で,新潟市,聖籠町沿岸の海域が村上市胎内市沖促進区域に次いで高い発電効率が期待される.水深が深く,浮体式の洋上風力発電施設が検討される海域においては,佐渡の北部や粟島の西部などに村上市胎内市沖促進区域以上に高風速で,高い発電効率が期待される海域が存在することがわかった.