井岡 龍星 豪雪時の通行止め施策評価に向けた交通シミュレーションの検討 佐野 可寸志 令和2年12月中旬に関越自動車道で豪雪により車両がスタックを起こし,長時間の立ち往生が発生した.こうした豪雪時において,冬期の気象条件や道路環境によって変動する車両挙動を定量的に分析することで,豪雪時の道路交通確保に向けた対策に役立つと考える.本研究では,冬期交通流および通行止めによる交通行動の変化を調査して当該区間における交通特性を明らかにする.そして,冬期における影響要因を考慮した車両挙動を表現することが出来る交通シミュレーションの作成を目的とした. まずは,現況の道路環境を調査するために,ETC2.0 データを用いて,ODパターンの分析を行った.結果としては,降雪時では小型車が約20%減少した.一方,大型車のトリップに変化が見られなかったことから,降雪による経路変更は少ないことが明らかとなった. 次に,シミュレーションの交通需要として入力するためのOD交通量が必要であるため,ODパターンを基にしたOD交通量の推計を行った.ETC2.0の搭載率を基にOD拡大した結果,対象ネットワーク内を利用する大型車両の搭載率が非常に高いことから,推計することが困難だった.このことから,各路線の利用率を活用してOD交通量を推計する手法である残差平方和モデルを用いてOD修正を行った.観測リンク交通量や既存のOD交通量がデータとして存在しない状況から,修正OD交通量を求めることができた. シミュレーションモデルは,経路選択モデルや冬期車両速度推定モデル,除雪車挙動モデルなど複数かつミクロ・マクロ的視点のモデルが混合したモデルとなっているため,様々な視点からアプローチできるようなモデルを作成した.シミュレーションの結果としては,降雪による路面状況の悪化や除雪車への追従により,各リンクで遅れ時間の増加を確認することが出来た.しかし,冬期要因において現状では,路肩への堆雪による走行可能車線数の減少や追い越し挙動の分析など観測値が容易に得ることが出来ない指標が多いため,冬期の要因から逐次的に変動する交通流を表現する上で,現状の課題や現モデルのデバック方法,今後の拡張方針について引き続き考えていく必要がある.