伊豆拓斗 全国の空き家バンクを対象にした空き家成約要因に関する分析 佐野可寸志 近年,全国各地において,空き家が増加している.管理不全における空き家の外部比経済は,防災,防犯,衛生,景観など多岐にわたる.この問題の解決策として,地方自治体では空き家バンク制度を用いた取り組みを行っている.以上を背景として,全国版空き家バンクに登録されている物件データを対象に,物件の詳細情報や立地情報を用いた分析を行うことで,成約に結び付いた物件の内部的要因,立地的要因を明らかにすることを目的とした. まず,空き家物件の価格を推定するために価格を目的変数とする重回帰分析によりモデル構築を行った.空き家の価格を決定する際に,専門の鑑定士による決定以外に,空き家所有者の希望価格で決定される場合があるからである.分析の結果,主に「築年数」,「延べ床面積」「都市計画区域」が価格形成に強く影響を与えていることが確認できた. 次に,内部的要因,立地的要因の変数に加え,重回帰分析で得られた重回帰式を用いて価格を算出し,実際の価格との差を「価格差」として追加し,成約,未成約を目的変数とする判別分析を行った.分析の結果,「築年数」,「保育園・幼稚園までの距離」,「市街化調整区域」の変数が特に成約に影響を与えていることが確認できた. 判別分析結果より,市街化調整区域の物件が成約の傾向があることに対して,コンパクトシティの考え方との意向が逆行している可能性があり,自治体の空き家対策の取り組みとのまちづくりの意向を調査するために,自治体にアンケート調査を行い,意向を把握した.その結果,コンパクト化を目的とし,まちなかに位置する空き家のみを対象にした空き家促進施策を実施している自治体や,人口減少地域の移住・定住を目的とし,市街化区域以外の地域に位置する空き家のみを対象にした空き家促進施策を実施している自治体など,自治体によってまちづくりと空き家促進の方向性が多様であることが明らかになった.また,判別分析により得られた空き家成約要因と既往研究によって得られた空き家発生要因のずれを把握し,築年数が高い空き家,利便性が乏しい空き家が今後未成約として残され続ける可能性が高いことが明らかとなった. これらの結果から,空き家数減少のために,空き家解体補助や空き家購入補助などの金銭的な補助対象を見直すことが望ましいと考えた.以上の結果を踏まえて,分析に用いる変数の充実や施策の検討が今後の課題として挙げている.