田辺啓輔 走行性と安全性を考慮した除雪オペレーションの検討 松田曜子  近年,我が国では短期間の集中的な降雪による雪害が頻発している.令和2年12月には関越自動車道新潟県区間や群馬県区間で大規模な滞留が発生し最大で約2,100台が巻き込まれ,社会的に大きな影響があった.このように高速道路での滞留は社会活動に多大な影響を及ぼすため,発生を抑制しなければならならず,そのためには除雪作業が大きな役割を果たす.  そこで本研究では高速道路における除雪作業の影響を考慮した一般車両の所要時間を算出することで,走行性と安全性を両立した除雪オペレーションを検討することを目的とする.対象路線は関越自動車道新潟県区間の湯沢管理事務所管内とする.  はじめに,除雪作業について分析を行い,除雪速度と除雪回数について傾向をまとめた.除雪作業について分析を行い,除雪速度と除雪回数について傾向をまとめた.その結果,本分析では除雪速度は降雪量,気温,交通量との関係はみられなかった.また除雪回数は降雪量の増加に伴い増加する傾向を確認した.次に冬期の高速道路において路面状況と気象条件等との関係分析を行い,降雪量,気温,風速,路温,除雪作業からの経過時間, 昼夜ダミーを説明変数として正解率76.2%の路面状況推定モデルを構築した.説明変数が推定に及ぼす影響を表す重要度は,降雪量及び除雪作業からの経過時間が大きい値となった.  次に,冬期における一般車両の走行速度を推定するため降雪量,気温,大型ダミー,路面状況ダミーを説明変数として重回帰分析を行い,速度予測モデルを構築した.なお交通量に関しては対象路線を走行する車両は自由速度で走行していたことから,速度に与える影響は小さいと想定し説明変数には追加しない.モデルの精度を示す自由度調整済み決定係数は0.320程度であり,十分な精度は得られなかった.標準偏回帰係数は路面状況を表すダミー変数が総じて大きくなる結果となった.路面状況が走行速度に大きな影響を与えることが考えられる.  これらの分析をもとに除雪オペレーションを検討するため除雪効果を分析し,条件によって速度が回復する場合としない場合があることを確認した.また除雪を行う区間をパターン化して分析したところ,パターンによって一般車両の所要時間に変化が生じることを確認した.  本研究のなかで,路面状況推定モデル構築に使用する教師データのバリエーションが少なく,除雪からの経過時間を変動させた場合に路面推定がうまくいかなくなるため除雪効果の検討が十分にできていないという課題が残った.