下谷菜々子 衛星積雪面積率と積雪水量の関係に関する研究 高橋一義 豪雪地帯は,国土の約51%に及ぶ広大な面積を占め,また総人口の約15%を擁し,我が国の経済社会において重要な地位を占めているが,毎年の恒常的な降積雪によって,住民の生活水準の向上や産業の発展が阻害されてきた.また,積雪は雪崩や,融雪に伴う洪水や地すべり,交通災害などを引きおこす要因となっている.一方,融雪期における用水河川へ流出した融雪水は農業用水や工業用水,発電のための資源として利用されている.そのため,融雪期に積雪水量状況を時間的,空間的に把握することは,災害発生の予測や水資源管理において重要である. 本研究では,対象流域を関川流域,利根川流域として積雪水量と積雪面積率の関係を調査した.既往の研究ではあらかじめ雲域を低減させた8日間の最大積雪域が格納されているデータを使用して積雪域の判別を行った.本研究は雲域の影響をさらに低減するために,GoogleEarthEngineを用いて10日間合成の積雪域判別画像を作成し,積雪面積率を算出した.また,最小積雪域での積雪画像を作成することも可能であるため,最小積雪域での結果も抽出し,その結果により積雪面積率と積雪水量の関係のデータ数を増やすことができるか検討した. 融雪期における10日間隔の積雪面積率の経時変化を調べた結果,雲の影響により,融雪末期での積雪面積率の増大が見られた期間が存在したが,すべての流域において時間経過に伴い積雪面積率が減少することが明らかになった. 流出量と降水量の差を積雪水量とし,消雪日より逆算して,各流域の積雪水量を算出した.その結果,積雪域が小さい流域では,乾いた土が多く,融雪水や雨水の地下への流入があるため,簡略化した水収支式では積雪水量が算出できないことが明らかになった.積雪が多い地域に限定し,再度解析を行ったが,同様に積雪水量を求めることができなかった流域が存在した.積雪面積が小さいことの他に,地域によっては積雪水量が求められない場合があることがわかったが,原因をつきとめることは難しかった.また,積雪水量を算出できた流域に関しても,積雪域の画像による誤差などにより,消雪日になる前に積雪水量が0mmを下回る日が存在した. 積雪面積率と積雪水量の関係では,積雪面積率は積雪深を考慮していないので,面積率は同じでも積雪水量には違いが生じ,すべての年で相関を得ることはできなかった.しかし,積雪量が同じぐらいの年では似たような相関が得られることが示唆された.また,最大積雪域と最小積雪域を使った結果については,対応させる日付を適切にとることで,同じような関係が得られることがわかった.そのため,最大積雪域と最小積雪域のデータを使うことで,データ数を増やし,積雪水量と積雪面積率の相関の精度向上が期待できると考えられる.