金川哲也 画像・地形情報と深層学習を利用した斜面崩壊地判別手法に関する研究 高橋一義 我々が生活をする上で欠かせないのが電気やガス・水道といったインフラ設備である.しかし,日本は地震などの災害が多く,山間部などを中心にこれらが寸断されることが多い.これに際して重要になるのが設備の早期復旧である.しかし,山中に存在する設備については点検を目視に頼っていること,アクセス性に難があることが影響して初動の状況把握に時間がかかり,早期復旧の課題となっていた.この状況把握を画像情報と深層学習を利用して補うことができればライフラインの早期復旧が可能になると考えられる. 本研究では既往研究において判別が難しかった日陰領域の崩壊地や崩土上に植生が残る崩壊地の判別性能を向上しつつ,判別した崩壊地について位置情報を含めて獲得できる斜面崩壊地検出手法を構築することを目的として発災前後の可視画像・地形情報を利用した転移学習による崩壊地の判別を行った.まずはネットワークモデルが1つのシングルモデル法によって崩壊地判別に対する地形情報の有効性を確認すると共に判別性能を向上させる学習データ作成手法について検討した.この結果を基にGrad-CAMによる誤判別要因の可視化を行い,地形情報を使用した場合でも小さな非崩壊地の影響で画像全体の判別を誤るケースがあることが明らかとなった.また,これまでの研究の成果から同じネットワークに対して同じ学習データを元に学習を行ったとしても抽出される特徴が異なるため,判別可能な崩壊地の特徴に偏りが生じる可能性が提起された.これらの結果を踏まえてネットワークを複数使用して判別を実施するマルチモデル検出によって斜面崩壊地判別を行い,判別性能を検討した.ここでは9つのネットワークによって判別を行い,多数決判定によって崩壊地を判別したが,非崩壊地を崩壊地と判別する箇所がやや多く確認されたため崩壊地の位置情報を捉えづらい結果が出力された.各ネットワークの判別結果はそのままに判定の条件を厳しくして再度判別したところ崩壊地の形・位置情報を捉えることが可能な画像が生成され,マルチモデル検出は判別可能な特徴の偏りの影響を減じつつ出力された画像によって崩壊地を把握することが可能であると確認された. これによって被災時における斜面崩落状況の把握が可能となり,インフラ設備点検路の状況把握や人が入れない山中の被害把握,林産資源の被害見積もり等が容易になるものと考えられる.