山本 寅大 誘電型土壌水分センサーによる測定値の温度依存性に関する研究 陸 旻皎 高精度な土壌水分計測技術が求められる中,TDR法が注目される.この手法はTopp et al.(1980)により報告されて以降,国内外で標準的に使われている.しかし,TDR法による土壌水分量計測値と土壌温度の間に不自然な関係が確認されるという報告が相次いだ.この温度依存性を校正すべく,数多くの研究者が温度校正手法を提案してきた.ただ,温度依存性を引き起こす要因は明らかになっていない.自然環境下では土壌水分量の変動を引き起こす要素が多く,土壌温度そのものによる影響がどの程度作用しているかは未知数である.そこでLu et al.(2015)によるデータ解析の結果,蒸発や降雨による土壌水分量変動を除いた場合において,土壌温度が土壌水分量に与える影響は土壌温度そのものとTDR土壌水分計測値にほぼ比例することを示した.本研究では,土壌温度そのものがTDR土壌水分計測値に影響するという上記の解析結果を踏まえ,外部からの影響(蒸発や降雨)を受けない条件下においても温度依存性が再現されるか検証するため室内実験を行った.実験は,模擬土壌としてガラスビーズを円筒形アクリル容器に充填した後,体積含水率を調整して密閉した実験装置の温度を操作し,温度変化している間,TDRセンサーで断続的に体積含水率を計測した.模擬土壌の体積含水率を3%,5%,10%,20%の4パターンに調整し,それぞれ実験を行った.その結果,すべての体積含水率パターンにおいて室内実験でもTDR土壌水分量計測値の温度依存性が確認され,土壌温度そのものがTDR土壌水分量計測値に影響を与えていることが明らかとなった.温度依存性の傾向として,同等の温度幅であっても土壌水分量が多くなるほどTDR土壌水分量計測値の較差が大きくなることが判明した.さらに,体積含水率10%の実験では土壌水分量計測値と土壌温度の間に負の相関関係,それ以外の実験では正の相関関係を示した.これらの結果から,土壌温度が土壌水分量に与える影響はLu et al.(2015)で報告された比例関係よりも複雑である可能性が示された.また,実験で得た計測値に対して3種類の温度校正手法を用いた補正結果を比較した結果,Lu et al.(2015)で提案された温度補正係数αを簡便に調整可能なモデルが最も校正性能に優れており,温度補正係数αは土壌水分量に依存することが明らかとなった.