覺道 由郎 レーダー降水量を用いた後方流跡線解析による短時間間隔降雪水量の推定 熊倉 俊郎 新潟県の冬季において、降雪は人々の生活活動に大きな影響を与える。短時間間隔で降水量を知ることや、雪の降り出し・降り終わりの予測ができることは、防災・減災に非常に有効な情報となる。本研究では、上空を観測するレーダー観測面から風で流されてくる降水量を短時間間隔で推定するために後方流跡線解析を行った。また、それを用いた降水量と、通常利用されるような観測地点直上のレーダー観測値の2つを、地上観測降水量と比較することで後方流跡線解析の有用性について検証する。使われたレーダー観測は、長岡技術科学大学に設置した気象レーダーを用い、地上降水量観測は、防災科学技術研究所雪氷防災研究センターで観測された降水量を用いた。後方流跡線解析では、地上観測点の地上高度と緯度・経度から数値予報モデルの3次元風速場を南北・東西・標高・時間に対して線形内挿した風速を用いて、落下速度を1 m/s とした雪片粒子を時間的に後方に移動させ、それを繰り返して後方流跡線解析を行った。この後方流跡線と、いくつかの仰角のレーダー観測面が交差した場所・時刻の降水量をそれぞれの仰角の解析降水量とした。結果として、観測地点直上のレーダー観測値と比較して、後方流跡線解析降水量は時間的な増減傾向が地上降水量に近づいた。また、解析降水量は、地上に近い仰角の値ほど地上観測値に近い結果となった。以上から、本研究では後方流跡線解析を用いた短時間間隔降水量の推定は通常利用されるような観測地点直上のレーダー観測値よりも、地上降水量に近い時系列的な挙動をした。また、後方流跡線解析では過去に戻ることから、未来に降る降水量を推定することが可能となることも示した。