瓜生 大地 小型マイクロ波ドップラー装置を用いた降水種別判別と降水量の推定 熊倉 俊郎 日本では,北海道から山陰地方にかけて,日本海側の地域では毎年多くの降雪がみられる.実に,国土面積の50.8%が豪雪地帯対策特別措置法による豪雪地帯・特別豪雪地帯に指定されており,総人口の14.5%にあたる1824万人が生活している.人口稠密地域における降雪は人々の生活に与える影響が大きく,この影響は利用価値のある利雪から被害を与える雪害まで様々であるが,影響を左右する要因として固体降水量や固体降水種別である.よって,これらの観測は重要である.本研究では,簡易的で場所を取らない小型マイクロ波ドップラー装置を用いてそれらの観測を実現できるかを検討することを目的とした.ここでは,降雪室内実験装置を用いてほぼ均一な環境の下で,観測範囲内の複数の降雪粒子をどのように捉えているかを確認するとともに,降雪粒子の見かけの断面積を捉えている点に着目し,降雪粒子の断面積と体積の関係から降水量の推定を行い,その結果から粒子判別の可能性を検討した.まず,複数の降雪粒子を捉えているとき,大きな粒子については分離して観測されている可能性があることが分かった.また,降水量の推定については,センサーから得た時系列データを高速フーリエ変換し,その後ヒルベルト変換による包絡線処理を行い逆フーリエ変換した値を用いた時系列の振幅平均値と降水量の実測値を体積換算に基づく理論に従って回帰し,回帰曲線を得た.今回は人工的に作られた雪片状の降雪とごく小さな氷塊の降雪の場合について解析を行ったが,それぞれの密度は異なるため別の曲線が得られるはずであるが,両者を使って出された回帰式の場合でもRMSEが0.02 mm/min程度であった.しかし,野外で利用する場合にはこの式が使用可能かを観測で調べる必要があると考えられる.また,降雪粒子の粒子直径とその落下速度から種別判別ができる点に着目し,ドップラー装置では降雪粒子の断面積の代表値をとらえていることやドップラー速度を計測していることから,降水種別判別ができる可能性が示唆された.