猪狩 吉弘 固体降水粒子種別ごとの落下速度を考慮した後方流跡線解析による地上降水量推定手法の改良 熊倉 俊郎 新潟県をはじめとする豪雪地帯において、冬季の降雪は生活に影響を与える雪氷災害となりえる。雪氷災害による被害を抑制するためには、地上の降水量と降水種別を把握する必要がある。代表的な観測機器として気象レーダーが挙げられるが、降水粒子は風による移流の影響を受けるため、上空を観測している気象レーダーと地上観測の結果は一致しないが、後方流跡線解析により地表面の降水量を推定することにより回避できる。しかし、降水粒子の落下速度が固体降水の場合には種別によって大きく異なることが知られている。本研究では、粒子種別に関わる落下速度の違いを評価することが後方流跡線解析を行うにあたって重要なのかどうかを調べた。そこで、地上で観測された1分ごとに観測された固体降水の落下速度分布を用いて、それぞれの粒子体積と個数で主たる落下速度を選択した時の後方流跡線解析と、雪片の時の代表速度である1.1 m/s の時の後方流跡線解析の結果を比較した。それぞれ、レーダー観測面上の降水量と纐纈らによる降水粒子判別結果を、長岡市に設置されたMPレーダーに適用し、地上観測との比較を行った。比較には、霰と雪片が継続的に地上で観測された事例を用いた。降水粒子種別の判別結果を比較した結果、観測落下速度を設定した方が1.1 m/sの時の判別結果と比べて霰の事例では17.7%、雪片の事例では27.3%ほど的中率が向上する結果となった。特に霰の事例においては観測落下速度を与えた時の的中率が85.3%となり、高い精度で降水種別を把握できることが確認できた。また降水量を比較した結果、霰と雪片の両方の事例で、観測落下速度を設定することで、1.1 m/sの時と比べて降水量及び時間的な推移の推定精度が向上する事例が確認できた。これより、後方流跡線解析を行うにあたって重要な事例があることが確認できた。