西島有貴 新潟県周辺で発生した内陸地殻内地震の距離減衰特性の分析 池田隆明 地震の揺れは一般的に震源から離れた場所ほど小さくなる.この現象は距離減衰と呼ばれており,地震動評価手法の1つに,この特性に着目した距離減衰式がある.距離減衰式では精密な評価は難しいものの,地震の規模を表すマグニチュード,震源からの距離が得られれば対象地点での最大地震動を推定できることから,非常に簡便な手法として広く用いられている.本研究ではこの距離減衰式に着目し,日本で標準的に使用されている司・翠川(1999)の距離減衰式を基本式とした.この基本式をもとに,本研究では,距離減衰式から推定された最大加速度、最大速度と実際に観測されたデータとの比較を行い,新潟県周辺の距離減衰特性を分析した.また,地震動の到来方向や新潟県周辺の地盤構造が距離減衰に及ぼす影響についても分析した. 観測点と対象地震を決定した後,地震データを強震観測網(K-NET,KiK-net),広帯域地震観測網(F-net)を使用して,距離減衰式に入力するために必要なデータを収集した.本研究では,対象地震を2004年新潟県中越地震,2007年新潟県中越沖地震,2011年長野県・新潟県県境付近の地震,2013年栃木県北部の地震,2014年長野県北部の地震,2019年山形県沖の地震とした.収集した地震データから,断層面の決定,緯度・経度の直行座標(UTM座標)への変換等を行い,断層とサイト(強震観測網の観測点)との幾何学的な最短距離である断層面最短距離を計算した.また,この断層面最短距離を使い,最大加速度・最大速度それぞれの距離減衰曲線を作成し,観測点との比較をおこなった. 最大加速度,最大速度の解析結果から,2004年新潟県中越地震と2019年山形県沖の地震については,最大加速度(PGA),最大速度(PGV)ともに観測記録を過大評価する(距離減衰が想定よりも少ない)傾向を示した.一方,2007年新潟県中越沖地震,2011年長野県・新潟県県境付近の地震,2013年栃木県北部の地震については,最大加速度(PGA),最大速度(PGV)ともに観測記録を過小評価している(距離減衰が想定よりも大きい)傾向を示した. これらの傾向は,地震波が通る地盤の影響を強く受けることが分かった.