久保田碧人 新潟県周辺で発生した内陸地殻内地震で観測された地震波の周波数特性の分析 池田隆明 日本で毎年多くの被害地震が発生することから,そこからの被害を減らすことは重要な課題であると考えられる.特に地震によって生成される地震波は,建物に大きな影響を与えることから,観測記録に含まれる周波数特性を理解することは今後発生が想定される大地震による被害の可能性を検討する上で必要であり,周波数特性を理解することによって大地震の地震発生後だけでなく,地震発生前においても建物の対策に繋がると考えられる. 本研究では,近年発生したマグニチュード6クラスの大地震で観測された記録を解析し,その記録の持つ周波数特性の分析を行った. 観測記録の周波数特性を分析する手法としてはランニングスペクトルを用いた. ランニングスペクトルの計算では,新潟県中越地震,新潟県中越沖地震,長野県北部の地震,栃木県北部の地震,山形県沖の地震の5つを対象に,解析の対象地点であるKNET長岡地点(NIG017)で観測された記録を強震観測網(K-NET,KiK-net)からダウンロードしたパラメータを使用した.ダウンロードした観測記録は強震動ツールSMDA2を使用して解析した.解析結果は,観測点(NIG017)から見て南方向に位置する長野県北部の地震,新潟県中越地震,栃木県北部の地震をグループ1.北方向に位置する山形県沖の地震と新潟県中越沖地震をグループ2に分けて考察を行った. 解析結果から,グループ1(新潟県中越地震,長野県北部の地震,栃木県北部の地震)では,高周波数帯域の成分は卓越していて,NIG017では比較的強い揺れを感じやすかったと考えられる.また,地震波の伝わり方から固い地盤を通過してきたと考えられる. グループ2(新潟県中越沖地震,山形県沖の地震)では,グループ1と比較してそれほど高周波数帯域の成分は卓越せず,強い揺れは感じにくいと考えられる.また,地震波の伝わり方から,軟弱な地盤を通過してきたと考えられる. 本研究では,観測点を新潟県の長岡地点(NIG017)に着目し,そこで記録が得られた5つの地震を対象に解析を行った.今後,より詳細な周波数特性の分析を行うためには,より多くの到来方向や規模の異なる地震を増やして解析を行うことが重要だと考えられる.