高田光 表層地盤特性が地震動特性に与える影響 池田隆明 2004年新潟県中越地震では震源近傍で強い地震動が生成され広い範囲で多くの被害が生じ,震源近傍の旧川口町武道窪地区でも家屋の倒壊等の被害が多く発生した.しかしながら,被害の程度は一様ではなく,当該地域の直径1km2未満の狭い範囲で場所により被害状況は異なったことが地震調査報告から明らかになっている.既往研究では,木造住宅の地震被害の傾向について,家屋の建築年代や構造に特に大きな差がなかったことから,地盤特性の違いにより生成された地震動が異なり,その影響で被害が生じたことが示唆された.さらに,当該地域における複数地点で微動計を用いた常時微動測定を行い,地盤の卓越振動数を推定した.推定した卓越振動数をカテゴリに分類し,卓越振動数と被害状況に相関があることも示している.しかしながら,常時微動による卓越振動数の結果は離散的であるため,地盤特性の大まかなカテゴリ分けは可能であったものの,各カテゴリの境界部が不明瞭な結果となった. そこで,本研究では地盤特性の連続的評価を目的に連続的な地盤特性を把握可能な表面波探査手法を用いて地盤構造(2次元S波速度構造)を推定し,その結果を用いて,地盤特性の違いによる地震動特性の違いについて検討した.さらに,地震動分布と被害分布を比較し,木造家屋の被害原因を考察した. その結果,被害大・中の地域ではS波速度が小さい軟弱な表層が厚く分布し,被害小の地域では軟弱な層は厚く分布していないことが分かった.この結果は当該地域における地形および地質の違いを反映しており,地震被害および2次元S波構造,地形および地質はそれぞれ同様の傾向を示した.したがって,表層地盤における軟弱な層が分厚く分布している地点においては,木造家屋が倒壊に至るほどの大被害が発生する可能性を示唆した.また,地震被害と当該地域の表層地盤特性との比較を行った結果,緩く堆積した分厚い粘土層が木造住宅の地震被害に大きな影響を与えたと考えられる.S波速度と層厚の違いによって地震動の特性に影響を与え木造住宅の被害の程度が狭い範囲で異なることを示唆した.