池田綾華 既往地震の再現に関する取り組み,1987年千葉県東方沖地震(M6.7)における地震被害と地震動レベル 池田隆明 日本での地震災害は後を絶たない.たびたび,多くの被害地震が発生し,多くの犠牲が伴っている.このような被害を防ぐために,過去の地震の知見を蓄えていくことが重要である.なぜなら,「地震被害は繰り返される」からである.全く同じ地震被害はなくとも,地盤状況,周辺環境,地震規模など条件が揃えば,別の場所でも同等の地震被害が発生する.そのため,同様な地震が発生した際に,迅速な対応が行えるように,過去の地震を分析していくことが重要である. 近年,地震に関する情報収集・分析手法などは多様化している.広域な地震観測網や,GPSによる位置情報を持った観測記録などは近年,急速に発達したものである.一方,過去の地震については,調査は行われていても情報量が少なく,アナログ的に保存されており,情報の逸脱が見受けられる.地震防災において過去の地震の分析が重要だが,実際に分析対象とできるような,記録や文献が残存する被害地震は少数である.その傾向は,過去の地震になるほど顕著になるため,限りある貴重な残存する地震記録の収集は,逸散が進む前に早急に取り掛かるべきである. 日本の都市部は,軟弱な沖積平野に属することが多い.さらに,『一極集中』と言うように,日本の重要な機関は首都圏に集中しており,ひとたび大地震が発生すると被害は甚大と考えられる.本研究で対象とするのは,1987年千葉県東方沖地震である.首都圏に震度5の揺れをもたらし,死傷者が発生したほか,多くの住家に損壊を与えた.現代地震観測網だけでなく,個人の情報記録術なども,普及しない時代に発生した地震にも関わらず,本研究において,3種類の地震観測記録を確認した.これらの記録は,たいへん貴重な記録であると同時に,一元的な整理・管理が行われていない.そのため,地震情報を可能な限り収集し,貴重なデータのアーカイブ・デジタル化し,実観測記録の分布図として当時の状況を再現する.また,再現を行った地震記録をもとに,現代のデータ管理技術を用いた,詳細な再現を行うことで被害想定に活用する.地震動の距離減衰特性を用いて,地震規模,震源深さ,地震タイプなどからある地点の地震動を算出することが可能な,司・翠川らが提唱した距離減衰式の評価を行い,再現精度を高め首都圏の想定地震動を算出する.また,地震被害記録についても情報収集と整理を行うため,想定地震動と実被害の記録の関連性を分析する.