北國桂瑚 コンクリートの内部劣化の予測のための外観調査 中村文則 我が国の土木構造物は多くが高度経済成長期に建設され,供用開始から50年が経過し始めてきている.今後これらの橋梁については維持管理費の急増が懸念されるため,維持管理の効率化による費用の低減を図る必要がある.塩害を受けたコンクリート構造物では,コンクリート表面にひび割れ,錆汁および剥落などの損傷が現れる.そこで,本研究では効率化のための検討として,撤去された青海川橋を利用し,外観の損傷状況と内部劣化度の関係性の調査を行った.上部構造T桁下フランジ部を調査対象とし,核供試体を海面,下面,山面の3面に分けて調査を行った. 最初に,外観損傷調査ではクラックスケールを用いたひび割れ幅の測定,ひびの軸方向直線長さの測定,打音ハンマーを用いた浮きおよび剥落面積の測定を行った.その結果,ひび割れ長さおよび幅は全体的に海面で大きくなること,一番海に近い供試体では山面のひび割れが大きくなることが確認された.また,浮きおよび剥落面積と供試体位置にはあまり関係性が見られなかった. 次に,内部劣化度調査では,浸透塩化物イオン量と鋼材腐食量の測定を行った.浸透塩化物イオン量はドリルを用いて,表面から14cmの深さまで2cm間隔で粉試料を採取し,塩分量測定器によって塩化物イオン濃度を測定した.その結果,塩化物イオン濃度はすべての供試体において海面での値が大きくなること,橋の幅方向中央における供試体の塩化物イオン量が大きくなるような傾向が確認された.また,鋼材腐食量は10%クエン酸Ⅱアンモニウムに鋼材を漬けた後錆を物理的に除去し,鋼材の規格値と質量を比較することで腐食率を算出した.その結果,すべての供試体においてせん断補強筋が腐食していること,PC鋼材および軸方向鉄筋の腐食はせん断補強筋の腐食が大きい供試体にて発生するような傾向にあることが確認された. 最後に,外部損傷と内部劣化度の関係を調べるため,得られたデータからグラフの作成を行った.その結果,浸透塩化物イオン量が,ひび割れ,浮き,剥落などの外観損傷に与える影響が小さいこと,外観損傷が非常に大きい場合のみにおいて塩化物イオン量との関係が明確になることが確認された.また,ひび割れと軸方向鉄筋の腐食についてが見られたが,PC鋼材およびせん断補強筋とひび割れ,浮きおよび剥落と鋼材腐食については関係性が見られないことが確認された.今回はPC鋼材についてのデータがあまり取れなかったため,今後の調査ではより多くのデータを集める必要がある.