山科裕海 コンクリート構造物における劣化促進物質の表面分布の予測 中村文則 本大学の位置する新潟県は南北に海岸部を有し,そのような沿岸部に位置するコンクリート構造物は海域からの塩分による鉄筋腐食・構造物の強度低下を引き起こす塩害劣化が問題となっている.このような塩害劣化の予防保全や維持管理は今後ますます重要となってくる.塩害劣化の予防保全のためには劣化の進行を予測する必要があり,特に塩害の進行は構造物表面の塩分量に左右されるため,予測の為には表面塩分量を推定するのが重要である.表面塩分量の推定には海域から構造物に作用する飛来塩分量と塩分の洗い流し再分配に影響を与える降雨到達量の両方を同時に予測する必要があるが,明らかにした事例は少ない.そこで本研究では構造物表面に作用する飛来塩分と降雨の到達量の表面分布を予測することを目的に,実験と予測解析とその検証を行った. 実験では実寸大橋梁主桁を再現した2種類の形状の模型を用意し,風況および飛来塩分,降雨を作用させた.その結果,模型周辺の風況分布は模型形状の影響によって変化し,飛来塩分も模型形状の違いにより到達量が大きく異なった.特に張出部を有する模型では到達量は各位置で差が大きくなった.降雨到達量は模型形状に応じて変化しており,風の有無によっても大きく分布が変化した. さらに実験では模型表面における降雨作用後の表面塩分量の測定を行った.本実験では飛来塩分を模型に作用させた後,30分間の降雨を作用させ,模型の表面塩分量を測定した.その結果,短期的な降雨作用では,降雨作用前後で表面塩分量の分布傾向に大きな差が生じないことが示された. 予測解析では,実験の模型を対象に飛来塩分・降雨の移動・到達過程を再現した数値解析を行い,その検証を行った.その結果,降雨粒子と飛来塩分粒子の移動・到達過程は,同様の粒子追跡手法で実験値の到達分布の傾向を再現できた.また,飛来塩分粒子は模型周辺の風況の影響を大きく受け,降雨粒子は模型形状の影響を大きく受けることが示された. 本研究では,コンクリート構造物外部から表面に作用する降雨と飛来塩分粒子の表面分布を把握し予測するために,模型実験と数値解析を実施した.その結果,模型形状によって周辺の風況が変化し,その影響により飛沫到達量・降雨到達量・到達箇所が異なることが示された.また,飛来塩分と降雨の移動・到達過程は同様の粒子追跡手法で表面分布傾向を再現できることが示しめされた.   実際の構造物においても,同様な到達傾向がみられることが考えられ,今回使用した解析手法を用いることで,飛来塩分・降雨の到達分布を予測できると考えられる.