氏名:Batbaatar Nyamdorj 論文題目:鋼短柱のCFRP補強に関する基礎研究 指導教員:宮下 剛 概要:高速道路に比較的多くみられる上路トラス橋の引っ張り部材では応力余裕があり,部材断面が小さいケースが多い.それによって,その部材では,地震の時の圧縮力によって局部座屈が発生するので,耐震補強も必要とされている. 現在,鋼短柱の耐震補強では,高力ボルトを用いた当て板工法を実施することがほとんどで,それにはいくつかの問題点がある.それに対して,その問題の解決があるCFRP工法を耐震補強工法として用いることが望まれる.本研究では耐震補強に向けた基礎的な検討をするために,CFRPシート補強の補強効果を目的とし,矩形断面柱をCFRPシートで補強して圧縮実験を行った.今回の実験ではそれぞれのウェブとフランジが異なる13体の試験体を3つのケースで補強を行った.各試験体の無補強時の終局状態を道路橋示方書の耐荷力曲線で判定し,局部座屈が発生する面を補強した. 得られた結果から,荷重-鉛直変位関係,破壊状況,最大荷重,座屈荷重,荷重-ひずみ関係などの検討を行った.荷重-鉛直変位関係から無補強時と補強時の弾性域の荷重の増加傾向が理論値にほぼ一致していた.また,補強により無補強時の降伏荷重を超えていることもわかった. 破壊状況からシートの破壊と剥離によって脆性的な破壊が発生したこともわかった.最大荷重と座屈荷重に対しては同じ結果が見られ,シート補強で十分な効果を示していた.その中で,水平方向シートで補強した試験体の値が他の試験体の値より高いこともいずれの結果から見られた. それぞれの検討をまとめると,矩形断面柱をCFRPシートで補強することにより,最大荷重,座屈荷重,応力低減などに対して十分な効果があると言える.また,補強ケースの中から 鉛直方向シートと同数の水平方向シートで補強したケース2が一番効果的で,水平方向シートを半数にしたケース3の結果がケース2と比べあまり低下しないことがわかった.つまり,水平方向シートの枚数を減らしても結果に対して大きく変化しないと言える.