氏名:GANKHUYAG SARANGUA 論文題目:腐食したトラス下弦材格点部の応力状態の検討 指導教員:岩崎 英治 概要  日本では昭和30年から50年にかけて高度経済成長期に社会資本ストックは集中的に建設された.現在,2m以上の橋梁約73万橋のうち建設後50年を経過している橋が2018年において25%であり,2033年に63%となり,急激に増加する.これは社会基盤構造物の計画的な維持管理が重要となってくることが予測される. トラス橋の格点部下弦材の上面は,雪などの滞水や土砂が堆積しやすく,局所的な腐食が生じやすい部位である.格点部の劣化や腐食は複数な部材に影響を与えることにつながり,構造物全体に大きく影響するため,格点部材の応力状態の把握は重要と考えられる. 本研究では,ワ―レン形式トラス橋の格点部を対象にし,FEM解析ソフトを用いて,腐食減肉が生じた下弦材格点部の応力状態を検討することを目的とする.  解析モデルはシェル要素を用い,モデル範囲は両サイドに斜材が存在するガセットプレートと弦材ウェブが一体になった格点部を対象とする.下弦材格点部の応力分布が斜材の角度や斜材のガセットへの差し込み深さによって変化する.そこで,斜材角度はモデル1から順に43.03°,48.7°,54.46°,60.26°の4パターン,各モデルで斜材のガセットへの差し込み深さ(c)が3パターンあり,全て12パターンについて解析を行う.腐食範囲は, 1. 両側のガセットで囲まれた上面の全面が腐食した場合 2. 左右のガセットと端部から200㎜内側が腐食した場合の2つのケースを対象とする.  本研究を行ったことより得られた知見を以下に示す. (1) 同様な力が作用している場合,下弦材直上のガセット部には上面の端部と中央より大きい応力が発生する. (2) 引張力とせん断力が作用している場合両方とも腐食量が増えるにつれて応力が増加する. (3) 引張力が作用している場合,応力増加には角度とガセットへの差し込み深さの変化が関係なく,各モデルで同様な応力分布を示した.一方,せん断力が作用している場合,角度が大きくなるにつれて応力が低下しており,ガセットへの差し込み深さによる応力はほぼ同様である. (4) ガセット端部と腐食範囲が重なっていない際には引張力が作用している場合,ガセットの端部には腐食範囲端より大きい応力が発生し,せん断力が作用している場合は腐食範囲端部にガセットの端部より大きい応力が発生する.  これからの課題としてワ―レン形式トラス橋の格点部の応力状況を把握する簡易評価式の提案が残されており,FEM解析結果と比較し,妥当性を検討することが必要である.