Maldonado Gutierrez Carlos Eligio せん断鋼桁のCFRPシート補強に関する研究 宮下 剛 平成29年の道路橋示方書の改定により炭素繊維シート接着工法(以下,CFRP接着工法)で補強・補修された鋼部材の限界状態設計法への適用が求められることが考えられる.これを受け本研究では,CFRPでウェブを補強したせん断鋼桁の限界状態の設定を目的とした試験を実施した.この結果を用いて以下の検討を実施した.まず,CFRPの補強能力の有効性を検証することを目的として,耐荷力試験後のせん断桁の各部材セクションのイベントを整理した.次に,補強の限界状態を設定するための基本データを収集することを目的に,各メンバーセクションのイベントを整理した. イベントの整理は,同じ寸法の3つのI字型桁に対して実施した. 1つのウェブは補強されておらず,もう1つはCFRPシートで補強されており,補強されたウェブではCFRPシートに加えウェブパネルの角を小さな鋼板で補強した試験体も設定した.これらの試験片はそれぞれS-1,S-2,S-3に分類される. S-1は無補強試験体で,荷重下の桁の基本的な動作と耐荷重抵抗を示す. S-2はCFRPで補強したケースで,座屈後のウェブ変形の低減,フランジの曲げひずみの低減による耐久性の向上など,CFRPを補強材料として使用した場合の効果を得ることができる. S-3は,CFRP補強材に加え角部に鋼板を追加したケースである.ここからは,ウェブの座屈後の変形のさらなる低減,部材のすべてのセクションの降伏荷重の改善を検討できる. 今後の課題として次のことがあげられる.CFRPシートの積層数を変更して実験を行い,せん断桁に対する補強性能がどの程度向上するかに関する検討.この検討により,コストの最適化に関する分析を行うことができるといえる.また,異なる寸法の桁を使用して実験を行うことで,せん断桁に対するCFRP補強の影響をより包括的に分析できる.以上の検討により,方程式を使用してCFRP強化の有効性を確実に予測する方法を見つけ,CFRPシートの補強量を算定することが求められる.