髙森 敦也 CFRPを接着貼付した鋼部材の解析手法に関する研究 宮下 剛 現在,炭素繊維シート接着工法(以下,CFRP接着工法)により補修または補強した鋼部材の有限要素解析(以下,FEA)は弾性解析が一般的に行われている.一方で,道路橋示方書の改定によりCFRP接着鋼部材の限界状態設計法への適用も想定され,CFRPシートのはく離や破断といった種々の要因によるCFRP接着鋼部材の非線形挙動を再現できる有限要素解析手法の確立が求められている.CFRP接着工法では,はく離による脆性的な破壊を防ぐため低弾性かつ高伸度といった特徴を有す高伸度弾性パテ材(以下,パテ材)と呼ばれる材料を鋼材とCFRPの接着層に挿入する工法が用いられる.本研究では,このパテ材使用時の応力低減効果とシートのはく離またはく離後の挙動の非線形性を再現可能なFEAモデルに関して検討した. 初めに樹脂材料のモデル化方法を検討した.一般にパテ材のような樹脂材料をソリッド要素でモデル化すると応力特異点では要素サイズの依存性が高くなり,適切に応力を評価できないとされる.そこで,樹脂材料であるパテ材と含侵接着樹脂材を界面要素でモデル化した.これにより樹脂材料が要素サイズの依存性を有さなくなることが分かった. 続いて界面要素でモデル化したパテ材に導入する応力-相対変位関係を検討した.まず,パテ材の挿入による応力低減効果変化の再現性をCFRP接着平鋼の一軸引張試験のモデル化により検討した.この結果,法線方向は弾性係数を塗布厚で除した剛性成分を有する3角形分布を得た.また,せん断方向はせん断弾性係数を塗布厚さで除した初期剛性の後90%の剛性低下を有する4角形分布を得た.次に,シートのはく離とその後の挙動の再現性をCFRP接着平鋼の一軸圧縮試験を用いて検討した.ここでは,引張試験のモデル化より得た応力-相対変位関係をもとに最大付着応力とはく離段階までの軟化挙動を検討した.この結果,法線方向においては最大付着応力を材料成績表に示される鋼材付着強度とし材料試験結果を参考に剛性成分の1.3倍の傾きを有する軟化挙動とする分布を得た.また,せん断方向は最大付着応力を2.46 N/mm2とし軟化挙動が傾きを有さないカットオフとする分布を得た.この最大付着応力は本研究で実施した材料試験より得た値とおおよそ一致した. 以上の検討より,本研究ではパテ材使用により生じる応力低減効果の変化・炭素繊維シートのはく離という非線形挙動の再現性を有するFEAモデルを提案した.