眞保 憲靖 高性能鋼を用いた鋼製橋脚隅角部に関する研究 宮下 剛 名古屋高速道路公社では,リニア中央新幹線整備計画における名古屋駅周辺交通基盤整備方針に基づき,新規の高速道路出入口等を鋼製ラーメン橋脚で製作する予定である.しかし,従来設計法では,線形状態,街路状況等により橋脚位置・断面形状が厳しい制約を受け,複雑形状な鋼製橋脚や鋼製橋脚隅角部の板厚が厚板化する問題がある.また,美島らが提案したフィレットを用いた隅角部のせん断遅れによる応力の低減効果を考慮した設計法では,疲労等に現行基準適用上の課題がある.そこで,SBHS500,SBHS700といった高性能鋼を鋼製橋脚隅角部に用い,これらの適用性を載荷実験より確認する.一方,高性能鋼は降伏比が非常に高く,エネルギー吸収能が小さい問題がある.このため,鋼製橋脚隅角部をホモジニアス構造とするのではなく,フランジにエネルギー吸収能が大きい普通鋼,縦リブに高性能鋼を組み合わせたハイブリッド構造の適用性について検討することとした. 鋼製橋脚隅角部の載荷実験は高性能鋼を用いたホモジニアス構造であるため,ハイブリッド構造の検証は弾塑性有限要素解析により行う.はじめに,実験供試体を再現した解析モデルを作成し,解析の妥当性を検証する.そして,ハイブリッド構造とした隅角部の解析を行い,隅角部の耐力,変形能等を把握する. 載荷実験では,隅角部のフランジ交差部ひずみと荷重-隅角変位関係の検討を行い,従来用いられるSM570と高性能鋼を比べて降伏時のひずみ分布に変化はあまりないものの,降伏荷重,最大荷重が若干大きくなることが確認された. 再現解析の妥当性検証では,ひずみ分布を確認することで弾性域での再現は行えているが,降伏後の荷重-隅角変位関係については課題が残る.このため,塑性域での妥当性を検証と並行して,現状で最大荷重が得られている解析モデルをハイブリッド構造とし,ホモジニアスな解析モデルと比較を行うことでハイブリッド構造の利点を整理した.結果として,ハイブリッド構造はホモジニアス構造に比べて,フランジ交差部ひずみの低減とフランジと縦リブの応力状態が優れていることが確認された.