久々江耀平 機械学習による短中期波浪予測システムの構築 細山田得三  洋上風力発電設備の施工や船舶の運行などの可否判断には,3日から7日先までの荒天日波高閾値(1.0~1.2m)を対象にした波浪予測が求められる.しかし,現行の予測システムでは空間解像度や予測精度が,不十分である可能性が指摘されている.このことからTomらによる先行事例『GWMとXGBoostを用いた1週間予測』をはじめとして,機械学習による予測精度向上の検討が進められてきたが,機械学習に必要な特徴量エンジニアリングやモデルの予測理由や挙動の解釈が行われていないなど不完全な検討がほとんどであり,真に機械学習の性能を発揮しているとはいえない.  そのため,本研究では,一般的とされる機械学習を用いて低波浪時の波浪予測を行い,改めてその性能を評価するとともに適切な機械学習の手法を提案する.モデルおよびライブラリは,テーブルデータを扱うこと,モデルの解釈性を考慮し,TabNetとXGBoostを使用する.入力したデータはNOWPHAS:波浪観測値の有義波・波高(m),JRA-55:長期気象再解析値の地表10(m)u・v方向風速(m/s)である.予測時点から過去のデータの変化や組み合わせから予測を行う回帰分析あるいは時系列解析として扱う.一般的な回帰分析として扱えば,今後発展的な手法やモデルを適用する際にその効果の推察が容易となる.  提案するシステムの第一段階としてある予測時点までの観測値や解析値から特徴量を作成する.次に作成した特徴量をモデルに入力し,学習させる.その学習済みモデルが特に重視した特徴量のみを選択し,再びモデルに入力し,学習させる.そうして作成したモデルと選択した特徴量により予測を行った.  結果,先行事例より3割程度の精度改善を果たした.また,機械学習モデルが重視している特徴量が北西の風の標準偏差であったことから物理モデルに近い挙動・特性を学習により獲得していることが明らかになった.本研究ではあくまでデータコンペティションや他分野においてしばしば適用される良く知られた手法用いているが,一定の精度改善を達成した.今後はこのシステムを基に発展的な手法を用いることでより精度を改善した予測や任意点での空間的な予測が可能となる.