金村 昂 富山湾奥部での高波災害発生時の特徴把握 犬飼 直之 2019年10月に台風19号によって,伏木富山湾付近で高波による被害が発生した.2019年度上原直也氏によって発表された「2019年の台風19号通過時における新潟県周辺海域の波浪特性の把握について」で新潟県周辺海域の波浪特性が明らかになっている.しかし,富山湾で高波浪となる条件の把握は,未だ行われていない.本研究では,漁業や港湾の関係者などの現場で働く人が容易に富山湾での高波浪を予見できるようにするため,富山湾での高波浪の条件を把握することを目的とした. 富山湾での高波浪の条件を把握するため,高波浪時の天気図との比較を行うべきだと考え,気象庁の公表している天気図を取得した.天気図より,富山湾で過去に高波浪を引き起こした際には,台風・低気圧が接近していたため,過去に日本に接近した台風・低気圧の経路について調査を行った.そして,日本に接近する台風・低気圧の経路を5パターンに大別し,富山湾で有義波高3m以上となった日時に台風・低気圧がどのような経路であったか把握した.その結果,台風・低気圧が関東上空を北東進するパターンが最も多かったため,この経路を台風・低気圧が通過するとき,最も注意が必要であることが分かった. しかし,関東上空を北東進する台風や低気圧は年間を通して無数に存在するため,台風・低気圧の規模について評価を行う必要があった.そこで,富山湾での気圧勾配を算出し,有義波高とどのような関係があるのか調査を行った.その結果,気圧勾配の増加に伴って,有義波高が増大するという傾向は見られたが,その関係にはばらつきが生じていた.そのばらつきの原因は,うねり性波浪の影響と気圧勾配の急激な変化であることが分かった.また,気圧勾配だけでなく,風向きの影響も考慮する必要があることが分かった.これらを踏まえて,富山湾で有義波高が増大する場合は,うねり性波浪ではなく,気圧勾配が0.04hPa/km以上,風向きがNEまたはNNE,台風・低気圧の経路が関東上空を北東進することが分かった. さらに,気圧勾配と有義波高の関係のばらつきの要因が,吹送距離にあるのではないかと考えたため,富山湾へ吹き込む風の吹送距離と風速を求めてSMB法によって有義波高を推算した.その結果,富山湾では,周期がしにくく,波高が増大しやすいことが判明した.さらに,その要因として,風速が速く吹送距離が短いことが挙げられる.