平田 壮 屈折率マッチング技術を用いた地盤内部における浸透流速の3方向成分計測の高度化 福元 豊 内部侵食現象は土木構造物に被害を与える要因の一つであるが,土中で起きる現象のため直接観察することが困難である.また,土粒子の侵食や流亡と浸透流という地盤工学と流体力学の相互作用を扱うための基礎的な知見が乏しく,未だに解明されてない点が多い.土粒子の間隙スケールで浸透流を観察するための研究手法として,MRIやX線CTを用いる例が多数ある.これらは,大変有用な実験手法ではあるが,装置が高価であり容易に実験を行うことが難しい.また,1秒以下の短い時間間隔での撮影に向いておらず,連続した撮影画像に対する解析結果から浸透流速や土粒子の移動速度を求めることができない.そのため,本研究では屈折率マッチング技術を用いて直接見ることができない内部の浸透流を可視化させる実験方法を確立させ,簡易的な模型実験を通して浸透流の特性を把握することを目的としている.これまで,屈折率マッチング技術を用いた浸透流の可視化実験は数多く行われてきた.しかし,それらの研究はいずれも浸透流を2方向成分として捉えているものであり,より実現象に近い結果を得ようとするには限界がある.本研究室においてもこれまではカメラ1台による2方向成分の計測を行ってきた.そこで,本研究ではカメラ2台を用いたステレオ撮影による浸透流速の3方向成分計測の確立および実験の高度化を検討し,浸透流を立体的に把握することを目的として研究を進めた.浸透流が立体的な情報として把握できるようになることで,実現象に近い実験結果を得ることができるようになることのほか,数値解析との組み合わせによってこれまで以上に浸透流の解明が進むと考えられる. 実験の結果として,3方向成分計測は昨年度から検討しているテーマではあるが昨年度は試行回数が非常に少なかったため,繰り返し実験を実施し浸透流を3方向成分で観察した.また,3方向成分計測の結果,浸透流速の異方性を再度確認できた.しかし,実験装置を改良することにより装置の下から,3方向成分計測の際の鉛直成分を含んだ平面で浸透流を観察した結果,3方向成分計測で得られた鉛直成分は平面で見て取得した同じ成分より過大に評価されていた.また,装置の改良によって様々な方向からの撮影が可能になったため,連続したレーザー断面を複数の方向から当てて情報を組み合わせ,立体領域内の浸透流の情報を疑似的に得ることができた. 今後の展望として,今回現在の実験条件において浸透流速の異方透水性を確認することができたが,アクリル球の粒子分布や配置を変更させた場合の異方透水性についても実験を行う.また,より多くの連続した断面の撮影および解析を行い,粒子配置までを含めた立体画像を再構築し,妥当性を確認し3成分計測や数値解析の結果と比較できるデータを得る.さらに,ボイリング現象の観察もできる鉛直上向きの浸透流の計測装置に対しても,3方向成分計測や複数方向からの連続した断面による浸透流の立体的な把握を適用して,3次元的なデータを得る手法をより発展させていく.