澤 知行 Peridynamics-DEMに基づく地盤材料の破砕挙動のモデリング 福元 豊 近年,台風や地震等による土砂災害(土石流,地滑り,崖崩れ)の頻発・激甚化が大きな社会問題となっている.このような現状で,土砂災害の効果的な予測・対策は日本の土地利用に係る喫緊の課題である.しかし,進行性破壊である盛土崩壊等の地盤破壊現象の科学的解明は未だ不十分である.地盤破壊現象の予測をするには,すべり面の発生やその成長過程を把握する必要がある.すべり面を物体が物理的に分離した面と考えると,破壊力学的にはすべり面の発生・成長を亀裂の発生・成長と捉えることができる.本研究では地盤破壊現象の亀裂が発生・成長する過程を把握するための数値解析モデルを提案した.初期亀裂によって引き起こされる亀裂の発生・進展,形状変化,強度変化に着目して,3種類の検討を行った.1つ目に,締固めた粘土の一軸圧縮シミュレーションを実施し,石川工業高等専門学校で実施された実験結果と比較した.2つ目に,圧裂引張シミュレーションを実施した.また,比較のための圧裂引張試験も実施した.3つ目に,上記の検討を行ったモデルによる複数粒子の破砕シミュレーションを行った.以上の結果,提案したPeridynamics-DEM連成モデルにより,地盤材料が変形し,亀裂の発生,破砕までのサイクルを計算できることがわかった.また,地盤材料として締め固めた粘土に着目し,初期亀裂を有する供試体の一軸圧縮試験及び圧裂引張試験の再現解析を実施したところ,同じパラメータで実験に対応した圧縮・引張強度と亀裂進展の様子を得ることができた.さらに,計算点間のボンドを軟化させる改良PMBモデルを導入することで,締め固めた粘土の実験結果で見られる非線形の応力-ひずみ関係を得ることができた.複数物体の破砕シミュレーションより,線分要素や任意の形状の物体による解析を行うことができた.今後は,圧裂引張試験において載荷面を小さくすることや画像解析を導入し,亀裂発生前のひずみ分布の計測を行うことによりモデルの高度化が可能であると考える.また,供試体を複数個重ねた実験を行い破砕シミュレーションの妥当性を検討する必要があると考える.上記の改良を加えることで,最終的には道路盛土や河川堤防など,土構造物スケールの解析へと展開をすることが可能だと考えられる.