片平耀款 機械学習と画像認識を組み合わせた斜面の広域危険度評価手法の開発 大塚悟 従来の斜面危険度評価は,メッシュ単位の個別評価を行っており,斜面の地形的特徴を考慮していない問題を有する.これより本研究では,様々なスケールの斜面の地形的要因を危険度評価に取り入れた予測を実施し,危険斜面を抽出するとともにその斜面の危険度を評価する解析手法の開発を行った.具体的にはAIを用いた2段階の解析システムを開発し,1段階目では,従来のメッシュ単位の予測に周囲5m四方の情報,周囲10m四方のマクロ的な情報を入力することで,予測結果に広域的な情報の入力が及ぼす影響について検討を行った.2段階目では,機械学習から得られた危険度評価の結果を用いて,画像認識により面的な危険度斜面ブロックの抽出を試みた.本研究の結果としては,1段階目の機械学習で,メッシュ単位の予測において,周囲のマクロ的な情報を入力すると予測の精度が向上することが確認された.また,機械学習の予測手法ごとのパラメータを変更させることで,予測精度に大きな変化が表れた.予測手法では,バギング木やブ―スティング木等のアンサンブル学習が,斜面崩壊の予測に最も有効であることがわかった.今後,他地域への予測を考える際に,地域に依存する値である標高データに代わるデータとして,開度データの入力が有効であることが明らかになった.2段階目の画像認識では,機械学習により得られた危険度評価の結果から崩壊ブロックの抽出を行うことができた.YOLO,pix2pix,Semantic Segmentationの3つの手法について実施した.YOLO及びpix2pixでは崩壊ブロックの抽出は可能だったが,実際の崩壊範囲より崩壊ブロックが小さく,薄く表示された.一方で,Semantic Segmentationにおいては,実際の崩壊範囲通りの崩壊ブロックの抽出が可能で,機械学習において誤分類した個所の補填が可能であった.これより,現状ではSemantic Segmentationが画像認識において最も有効であることが確認された.以上の結果から,機械学習においては,メッシュ単位での斜面の広域危険度評価にはスケールの異なる地形情報の入力の有効性が高いことが確認された.また,機械学習の結果を用いた画像認識により崩壊ブロックの抽出が可能であることが明らかになった.しかし,他地域への予測の検討や崩壊ブロックの危険度評価等,本研究で行うことができなかった項目が存在する.そのため,今後も継続研究が必要であると考えられる.