大熊 和樹 シート状発熱体のロードヒーティングへの適用性に関する研究 高橋 修 我が国は,国土の約6割が「積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法」にある積雪寒冷地域に指定されている.積雪寒冷地域では我が国の中でも特に積雪寒冷が厳しく道路の路面凍結や積雪による事故や通行止めが大きな問題となっている.そこで本研究では我が国で行われている除雪対策の1つであるロードヒーティングについて着目し,ロードヒーティングの中でもロードヒーティングの新たな発熱体であるシート状発熱体の適用性について研究を行った.ロードヒーティングとは,舗装内部に電熱線や温水管などの熱源を埋設し,温めることで雪を融雪する設備である.利点としては,自動的に稼働するので人材が不要であることや無散水融雪設備であるため大量の水が必要ないこと等が挙げられる.一方で欠点としてコストが高いことや施工に時間がかかることが挙げられる.ロードヒーティングの欠点を克服するため,炭素繊維素材のシート状発熱体が開発された.シート状発熱体によるロードヒーティングは,従来の施工方法よりも容易に施工可能で,コストを抑えられることが特徴である.しかし,シート状発熱体の寸法や充填剤の仕様等の具体的な施工仕様が未確定であり,これらに関する知見が少ない.そこで本研究では,シート状発熱体のロードヒーティングとしての効率的な施工仕様を確定することを目的に,シート状発熱体及び充填剤の寸法と融雪効果の関係性について検討した.本研究では,シート状発熱体の性能について比較実験を行った. 比較実験では低温環境下でのシート状発熱体の適用性に関する試験をおこない,データを取得することを目的に行った.溝の幅,電力,シート状発熱体の高さ,路面とシートの距離,雰囲気温度のパラメータについて変化させてシート状発熱体通電後の熱の広がりをサーモグラフィーで測定した.実験結果としては,施工幅については,施工幅18mmでの供試体の端の表面温度に着目すると,供試体の両端の温度が高いことが分かった.これは熱の広がりが他の施工幅が狭いものよりも良いことを表しており,充填材が融雪性能を上昇させる要素であると考えられる.路面とシートの距離についての比較は,距離15mmが35mmよりも全体の熱の広がりが良いことが分かった.シートの高さについての比較は,同じ電力で面積を減らして面積あたりの発熱量を上昇させると融雪性能が落ちたことから一定の発熱面積は確保する必要があることが確認できた.電力についての比較は,電力の上昇とともに表面温度も上昇していることが分かる.