大西 絢太   橋面アスファルト舗装切削残存層の不透水性を改善する工法に関する研究   高橋 修   我が国における道路橋の橋面舗装と鉄筋コンクリート床版の境界面には,床版内部への雨水や塩化物イオンの侵入を防ぐために,床版防水層が設けられている.この防水層は,橋面舗装の打換工事の際に再施工される.橋面舗装の打換工事では,舗装切削機により床版を削ることを避けるために,床版上のアスファルト舗装を10〜20 mm残存させて切削し,残存層は防水層とともにバックホウ等を用いて撤去されることが多い.切削残存層は,ひび割れなどの損傷が生じている可能性が高く,コンクリート床版と既設防水層が健全であれば,残存層のひび割れに補強を施して不透水性を改善することで,不透水の中間層として再利用できる.このように,残存層を撤去せずに有効活用できれば,既設防水層とコンクリート床版にダメージを与えることはない.さらに,橋面舗装の打換時に要する費用も工期も縮減できる. 以上のことから,本研究では,橋面舗装の打換時における切削残存層を中間層として再利用することを目的に,厚さ20 mmの残存層にアスファルト乳剤を浸透させて不透水性を改善することの有効性を評価するとともに,具体的な方法(有効な材料およびその施工仕様)について検討した.また,不透水性を改善した残存層の中間層としての性能を評価し,このような工法の妥当性について考察した. 本研究における残存層の損傷には,目視できるものと目視できないものがある.そのため,損傷程度を残存層の空隙率によって定量化することとし,現場から採取した残存層の空隙率を測定したところ6.5%であった.本研究で使用したアスファルト乳剤は,一般的なものよりも濃度の高い高濃度改質アスファルト乳剤とし,乳剤塗布の効果を比較するため2種類のものに対して検討した. 検討の結果,高濃度改質アスファルト乳剤を標準量塗布することで,残存層の不透水性の改善効果が認められ,一般的な乳剤よりも接着強度が高くなる傾向があった.また,乳剤が残存層の連続空隙に浸透することで,層としての強度を補強する効果が期待できる.乳剤の種類による明確な差異は認められなかったが,高濃度改質アスファルト乳剤の塗布により,残存層を不透水の中間層として活用できることを確認した.