鈴木健太 自家用車依存地域における県内高速バスの利用促進施策の評価 佐野可寸志教授 本研究は,自家用車利用の多い新潟県において,路線の縮小が進んでいる県内高速バスに着目し,その利用意向に影響を与える要因を3つのアプローチで明らかにし,これを基に利用促進施策の評価を行った. はじめに,県内高速バス路線の沿線住民を対象としたウェブアンケート調査から,県内高速バスの認知度の向上が利用意向に与える影響を,判別分析により明らかにした.分析結果より,「終発便時刻」および「パークアンドライド」の周知が利用意向に有意に影響を与えており,特に「終発便時刻」の周知が,利用意向の増加に大きく寄与していることが明らかになった.また,50歳以上の人は,サービスレベルを周知後の利用意向が低い傾向にあり,認知度向上施策は高齢層よりも若年層に効果があることが確認された. つぎに,同様のウェブアンケート調査から,県内高速バスのサービスレベルの向上が利用意向に与える影響を,コンジョイント分析により明らかにした.分析結果より,全体の傾向としては,「Wi-Fi・電源・テーブルの整備」が最も利用意向を増加させること,個人に着目すると,「乗継システム導入による増便」が最も重要視され,乗継システムの導入を嫌う傾向が強く,乗継抵抗が大きいことが明らかになった.また,「バスロケシステムの導入」は他の施策に比べて,利用促進効果が小さいことがわかった. さいごに,県内高速バス利用者を対象としたアンケート調査から,高速バスと自家用車を使い分ける要件および条件を,決定木分析により明らかにした.分析結果より,高速バスと自家用車の使い分けにおいて,「移動人数」が最も重要な要因になっており,1人ならば高速バス,2人以上ならば自家用車を利用する傾向が強く見られた.また,高速バスの利用条件として,移動人数が1人で荷物を座席に持ち込めるかつ,「交通費が支給される」,「交通費が自己負担で通院目的」,「交通費が自己負担で宿泊をする」,「交通費が自己負担で飲酒後に利用」の4つが抽出された.これらの利用条件より,移動人数が2人までは高速バスのほうが安くなることを周知する,県内高速バスでも無料でトランクが利用できることを周知する,会社から社員に高速バスを利用するように指示を出してもらう,診察予約と同時に県内高速バスの経路案内がされるようなMaaS型の仕組みを提供する,飲食後の利用を想定して所要時間が1時間程度の路線における終発便の繰下げを行うなど,効果を期待できる施策が挙げられた.